「ん~いいお天気!」
燦々と輝く太陽に青い空と、気持ちの良さにうーんと腕を伸ばすと、はためく洗濯物を見る。
日差しをたっぷり浴びた洗濯物はすっかり乾いたようで、取り込もうと手を伸ばして、とある布に首を傾げた。
「これって何なのかな?」
1メートル程の長さの布は真っ白で、用途がわからずしげしげと見つめていると、「ねえ」と後ろからかけられた声に振り返る。
「……君、何してるの?」
「あ、春草さん、おかえりなさい! 今日は早いんですね」
「何してるのかって聞いてるんだけど」
「え? ああ、洗濯物が乾いたので取り込もうと思っていたんです」
「そう。それでどうしてそれをずっと眺めてるわけ?」
心なし据わった目で冷たく問われて、芽衣は手にしていた布に視線を戻すと、そうだと春草に問う。
「春草さん、これって何だかわかりますか? こんな長い布何に使うのかなって不思議に思っていたんです」
「……君、それ本気で言ってるの?」
「? はい」
春草がどうしてそんな眼差しで見るのかわからずに首を傾げると、さらに冷ややかな眼差しで見られて。
「それ、鴎外さんの褌だよ」
「――え? ええぇぇっ!?」
春草の指摘に慌てて布もとい褌から手を離すと、彼の冷たい視線の意味を悟る。
「君って変わってる子だとは思っていたけど、まさか男の下着を眺める趣味があったんだ」
「ち、違います! だから、何かわからなくてですね……っ!?」
「変態」
ぼそりと呟かれた言葉に顔を真っ赤に染めると、踵を返し屋敷に歩いていく春草に、違うんですー!と必死に言い訳する芽衣の声が空しく響くのだった。
おまけ
「君、俺の洗濯物には触れないでくれる?」
「だから、違うって言ってるじゃないですか!」
「おやおや、二人とも。いつの間にそんなに仲良くなったんだい?」
「仲良くなんてなってません」
「だから、誤解なんです! 褌を眺める趣味なんてありません!」
「ん? 褌?」
→その後の褌騒動