今も昔も遠い未来も-6-

将望18

鳩尾の痛みに顔を歪めながら、将臣は望美を捜し歩いていた。
仲間、安徳帝、はては畑まで見て回るが、望美の姿は見つからない。

「どこ行ったんだ?」

飛び出していった望美の涙が頭によぎり、将臣は焦る気持ちを必死に抑えて探す。
赤らんだ空は、じきに夜が訪れることを示していた。
いかにこの島が穏やかなところであっても、女一人で夜の暗闇の中を歩くことは危険だった。
島中を回った将臣は、夕日がほとんど沈んだ頃に、ようやく望美の姿を見つけた。
彼の探し人はなんと海の中に立っていたのである。

「こんなとこにいたのか」

声をかけると、びくんと紫苑の髪が揺れる。
しかし、振り返らない望美に、将臣ははぁ~と息を吐くと、海へと入っていった。
じゃぶ、じゃぶと水を掻きわける音に、望美が後づさる。
そのまま逃げようと身を翻した望美の腕を、将臣が捕らえた。

「バカっ! 夜の海を無闇に歩き回るなっ!!」
「……っ」
怒鳴る将臣に、望美はきゅっと唇を噛みしめ俯いた。
沈黙が二人の間に流れる。

「――悪かった」
沈黙を先に破ったのは、将臣だった。

「お前の手を離したのは俺だったもんな。あの時も、十六夜の時も」

時空の波に飲み込まれ、勢いに逆らえずに離してしまった望美の手。
ずっと捜し求め、再会した時には、重い枷が共に歩むことを許さなかった。
望めば引き寄せられる距離にいながら、手を伸ばせない。
この腕に愛しいぬくもりを抱きながら、将臣は自らそれを断ち切ったのだ。

「お前が俺と一緒に行きたいって言った時――すげぇ嬉しかった」

「将臣くん……」

「一度でなく二度も手を離した俺が、お前について来いなんて、そんなこと言えるわけなかった。なのにお前は俺と共に行くことを選んでくれた」

まっすぐに見つめる将臣に、望美は目をそらせず見つめ返す。

「俺の都合ばかり押しつけて、お前の気持ちを考えてやらなかった。ごめん」
眉を下げ謝る将臣に、望美の瞳に涙が光る。

「将臣くん……っ」
「好きだ。今も昔も遠い未来も、ずっとお前を……愛してる」
将臣の言葉に望美が胸に飛び込む。

「私も……将臣くんが好きだよっ……ずっと一緒にいようね」
「ああ……もう離さない」
互いの存在を確かめるように強く掻き抱くと、二人は唇を重ね合わせた。

→第7話へ続く
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