結ばれた後も、ぴったり寄り添い、お互いの肌のぬくもりを感じあっていた望美は、不意に思い出したように弁慶に問う。
「そういえば、前に弁慶さんが言っていた"別の手”ってなんなんですか?」
「あぁ……」
望美の言葉に、弁慶が思い出してふふっと微笑む。
「あれは失敗でしたね。君を怖がらせて避けられた時には、どうしようかと思いましたよ」
「もう大丈夫ですけど……あの時から気にはなっていたんですよね」
瞳に宿った不穏な光。
それは、弁慶が何かを画策するときの瞳だった。
「僕は薬師ですから、色々な薬を持っているんですよ。たとえば夜が楽しくなる薬とか、ね」
「え!?」
思わず身を引く望美に、弁慶が楽しそうな笑みを浮かべる。
「でも初めての時に薬に頼ってじゃ望美さんが
嫌がるでしょう? だからあの時は本当に、ちょっとした意地悪のつもりだったんですが……」
続く言葉に、不安が大きくなっていく。
「でも、望美さんがより気持ち良くなれるならば、試してみるのも悪くないかもしれませんね」
「い、いえ……私は普通でいいです! はい、普通で!」
「では、普通に楽しみましょうか?」
囁いて腰に絡みつく腕に、望美が顔を赤らめる。
「あの……さっきしたばかりなのに、またですか?」
正直、初めて男を受け入れた望美の身体は、まだ痛みを訴えていた。
でも、弁慶が抱きたいというならば、拒みたくはなかった。
そんな望美の健気な想いを感じ取り、弁慶はそっと唇を重ねる。
「ふふ、冗談ですよ。そんな無理はさせられません。まだ痛むのでしょう?」
「……はい。なんかまだ弁慶さんが入ってるような、変な感じです」
望美の素直な感想に、くすくすと笑みをこぼす。
「明日からしばらく、座る時は必ず手ぬぐいを
重ねてそっと座った方がいいですよ」
「え? どうしてですか?」
「ふふふ、明日になればわかりますよ」
意味深な弁慶の言葉に、首を傾げながらも頷く。
翌日、その言葉の意味を、身をもって知る望美であった。
→5へ続く