翌日、学校を休んで向かった情報局で、多数の写真から見つけた1枚を抜いて目の前に差し出す。身元不明の収容者の一人。凝部の失われた記憶の彼。
「こいつがそうなのか?」
「全然覚えてないなんて、キョウヤくんってば薄情だよね~☆」
「な……だって……いや、そうだよな」
「なーに本気にしてんの。ただの冗談だよ?」
「……お前の冗談はたち悪いんだよ」
ため息混じりの抗議に浮かべていた笑みを消すと、それでと傍らの射落を見上げる。
「異世界配信はもう不可能なの?」
「まだ完全ではないけど、権限はほぼ情報局が掌握したからね。新たなキャストが選ばれることはもうない」
「でもアクセス不可能ではないんだよね?」
未だ『DEAD END』になった人間を救えていない現状で完全にアクセスを絶つのは最良とはいえないため、権限を奪い掌握しながら、プロデューサーとの交渉を進めていた射落は凝部を見る。
「それは機密。でもきみが何を考えてるかは気になるね?」
「自分達は秘密にして僕には明かせって、それってズルくない? ……メイちゃんを救う手立てはあるの?」
「…………現在、即座に打てる有効な手段はないね」
沈黙に隠されたものは、選べない選択肢。百を救うために一を捨てる。それが情報局の選択だとしたら、凝部が選ぶのは捨てた一。
「OK。じゃあ今日はこれで帰るよ。メイちゃんが収容されてることも分かったからね」
「お前、一人で無茶するんじゃねえよな? 瀬名が泣くぞ」
「……そんなつもりはないよ。可愛い~僕のヒヨリちゃんを泣かせるなんてごめんだもん☆」
真意を探るように見つめる明瀬にひらりと手を振って茶化して返すと、情報局を後にする。今度こそすべてを取り戻すために、バングルを操作するととある人物と連絡を取る。いくつかのやり取り、日時を決めると空を見上げて。向かうのはヒヨリがいる学校。自分やヒヨリ、獲端……そして陀宰の運命を狂わせた始まりの場所――。
→5話へ