好き、って言って

梓月15

「先輩。好き、って言ってください」
そう求める梓に、月子は頬を赤らめると「梓君が好き」と応じる。

いつも僕ばかり先輩を求めてますよね、と拗ねたように言われたのはいつだっただろう。
月子だって梓を好きだし、彼を求めているのにそんなふうに拗ねさせてしまうのはきっと何かが足りないのだろう。
だから恥ずかしさを飲み込んで求めに応じると嬉しそうに微笑んでくれる姿を見て、違うかもと心の内の声が告げる。
梓のことが好きだ。
だけど違くて、それだけじゃ足りなくて。

「好き、じゃ足りない」

哉太や錫也、弓道部の仲間たちも好きだけど、梓の好きとは違うから。
梓のことを考えると胸が熱くなって、嬉しくて。
この違いをどう伝えればいいかわからなくて彼を見つめれば、驚き目を見開いていた彼が目尻を染めて。

「……先輩って本当にずるいですよね」

そんな抗議にどうしてと問いかける前に、降り落ちた唇が言葉を遮った。

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