いとしい

錫月1

ずっと隣りにいて。
それがずっと続いていくと思っていた。
疑いもしなかった。
哉太と俺と……月子。
三人でずっといるのだと。

だけど……それは何も変わらないと言うこと。
気の許せる幼馴染。
傍で眠ってしまえるほど安心な……存在。

「ご、ごめんね。私寝ちゃってた!?」
「いいよ……って言いたいとこだけど、無防備すぎ。幼馴染の俺だからいいけど、気をつけるんだよ」

眠りから覚めたお前に微笑んで。
胸の痛みに目を背ける。

「だって、錫也といるとつい安心しちゃうんだもん」
「そっか……」

嬉しかったはずの信頼が苦しいなんて。
こんな感情知りたくなかった。
誰よりも変わりたくないと望んでいたのに、変化を求めているなんて。

一人の男としてみて欲しい。
幼馴染じゃなく、俺個人を。
お前が幸せなら俺も幸せだと、今はもう思えないから。
他の誰かじゃなくて、俺がお前を幸せにしたいから。

「錫也?」
呼びかけに顔を上げると、俺を覗き込むお前の姿。

「悪い。ちょっとぼおっとしてたみたいだ」
「錫也が珍しいね。もしかして具合悪い?」

そう言って伸ばされた手を掴んで、胸の中へと抱き寄せる。

「月子……好きだよ」
頬を染めるお前にキスをして。
愛の言葉をねだった。
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