父ちゃんの悩み

翼月

「お~いお前ら~! 元気でやってるか~!」
「あ、ぬいぬいだ! わーい!!」

久しぶりに星月学園生徒会に顔を出すと、喜色の面で翼がいつものように飛びついてくる。

「つ、翼。さすがに父ちゃんちょっと苦しい……ぞ……」

「ぬいぬい。俺、ぬいぬいに聞きたいことがあったんだ!」

「あ? なんだ?」

思い出したように腕を緩めた翼を、俺はぜーぜーと息を吐きながら見た。

「月子との仲を深めるにはどうしたらいいんだ?」
「…………………は?」

翼の問いに、たっぷりの間をあけ出たのは呆けたひと言。

「彼女との仲を深めるにはぎゅーっとしたり、ちゅーするだけじゃだめなんだって。でも他に何するんだ?」

翼の無邪気な質問に、がくりと力が抜けおちる。

「翼……。お前、誰にそんなことふきこまれた…?」
「ぬーん? クラスの友達なのだ」
「ったく……余計なことを……っ!」

星月学園に今、女生徒はいない。
故に、彼女を持つ翼に興味半分でけしかけたのだろう。 だがしかし――。

「翼。お前はまだ学生だ。人の力なしではいられない未熟者だ。だからまだそんなことに興味をもたんでいい!」

「ぬ? なんでだ? 未熟だと仲を深めちゃいけないのか? 俺は、もっと月子を幸せにしてあげたい」

「月子を幸せにしたいと思う気持ちはいい。だがな、その先は……まだ父ちゃんは許さんぞー!」

ぐあ! っと怒る俺に、翼は「なんでなのだ~?」とわけがわからず逃げ回る。
これも息子の成長の一つであれば、娘のためにも父ちゃんとしては正しく導く必要があるだろう。 だがこのことに関しては、俺も経験豊富とは言い難い。
後日、翼の元にいくつかの雑誌が差し入れられた。
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