世界で一番幸せな二人

直月

「へえ……あんたの彼氏って可愛い人だね」

珍しく部活休みの日。
近くのカフェで先日のデートの話を聞かせていた真琴の言葉に、私は慌てて手を振った。

「そんなことないよ? 直獅さんは背はちょっと低いかもしれないけど、優しくて明るくて、すごく生徒想いの素敵な先生なんだから」

「そのうえ彼女想いだし?」

「……………」

頬を染めて俯くと、真琴がふふっと微笑んだ。

「月子は本当に直獅さんのことが好きなんだね」
「う、うん……」

恥ずかしいけど真琴にならいいかなと思い、本心を口にする。 直獅さん。
誰よりも優しくて素敵な……私の彼氏。

「はいはい、御馳走様」

「ご、ごめん……」

「何言ってるの。私の前ではいろいろ話してって言ったでしょ? それにあんたが幸せだと私も嬉しいの」

「真琴……ありがとう」

大学に入ってようやく出来た女の友達。
誰よりも自分を理解してくれる優しい友達が傍にいてくれることが嬉しくて、ふんわりと微笑んだ。

* *

「そうか。よかったな」

昼間、真琴と交わした会話を伝えると、嬉しそうに電話の向こうで笑う直獅さん。
忙しい直獅さんとはなかなか会えないけれど、それでもこうして電話越しでも声を聞けることが嬉しくて、携帯電話を握る手に力がこもる。

「それじゃあ可愛い彼女を褒めてやらなきゃな」
「え?」

聞き返す声と共に響いたチャイム。
それは以前にもあったことで。
驚きと期待が入り混じりながら、私はドアを開けた。

「こら、ちゃんと確認してから開けないとダメだろ」
「直獅さん……どうして?」
「お前に会いたくなってな。悪いな、突然」

周りのものを元気にしてくれる直獅さんの笑顔。 気づくと私はその胸に飛び込んでいた。

「つ、月子? どうした?」
「嬉しくて……直獅さんに会えて嬉しくて……」
「そっか……。俺もお前に会えて嬉しいよ」

いい子いい子、と頭を撫でる大きな掌に、心がほんわり暖かくなる。
直獅さんを部屋に招き入れると、もう一度ぎゅっと抱きしめてくれた。

「前に会ってから一週間も経ってないのに、すっごくお前に会いたくなってさ。仕事終わってすぐバスに乗っちゃったよ」

「私も直獅さんに会いたかったから、すごく嬉しいです」

そうか~って嬉しそうに笑う直獅さん。
でも毎日でも会いたいのは私も一緒だから、こうして会いに来てくれた彼の気持ちが本当に嬉しかった。
頬を包む掌に、重なるぬくもり。

「……キスもしたくなった」
「直獅さんったら……」

顔を赤くしながら、それでも微笑んでしまうのは私も同じだから。
ちょっと勇気を出して、自分からもキスをする。

「つ、月子」
「その……私もしたくなったんです……」

顔を赤らめる直獅さんに、急速に恥ずかしくなり、俯き小さく呟く。
そんな私をぎゅうっと抱きしめると、もう一度、今度は少し深いキス。

「やば……帰りたくなくなってきた……」
「な、直獅さんが大丈夫なら私は……」
「い、いやダメだ! 明日は俺もお前も学校だろ」

嬉しくて忘れていたが、今日は平日。
明日は直獅さんも仕事だった。

「ご、ごめんなさい」
「い、いや、俺が余計なことを言ったから……っ」

顔を赤らめながら慌てる互いに、顔を見合わせ笑ってしまう。

「会いに来てくれてありがとうございます、直獅さん」
「彼氏が彼女に会いに来るのは普通だろ。だから、礼はいらない」

にっと笑う彼の優しさが嬉しくて、はいと素直に頷き微笑む。

大好きな、大好きな直獅さん。
今はまだ共に暮らすことはできないけれど。
いつかはきっと、あなたの傍で毎日あなたを感じられるように――。
その日に想いを馳せながら、私はもう一度直獅さんとキスをした。
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