(アルカナ2発売以前に書いたものです)
「今日はどこに行こう?」
「そうですね……リストランテで冬限定ドルチェが出ていましたので、それを食べに行くのはどうでしょうか」
「うん」
嬉しそうに微笑むフェリチータに笑みを返して、ポケットから白い手袋を取り出す。
「お嬢様、これをどうぞ」
「新しい手袋? ルカが編んだの?」
「はい。以前編んだものがそろそろくたびれる頃だと思いまして」
「あたたかい……ありがとう、ルカ」
「喜んでもらえて嬉しいです」
感謝を伝えると嬉しそうに微笑むルカに、フェリチータは少し思案するとその手をとる。
「お嬢様?」
「リストランテの前に寄りたいところがあるの。いい?」
「ええ、それは構いませんが……どこへですか?」
「ルカのマフラーがあるところ」
「え?」
フェリチータの言葉に驚き彼女を見れば、すっと首元に手を差し伸べられる。
「ルカは手袋をしてるから、だからマフラーならいいかな、って」
「それは……もしかして手袋のお礼ですか?」
「うん。ルカみたいに編んで返せればいいんだけど、今すぐは無理そうだから……だから今年は買ったもので許してね」
「そんな……っ私は別にお礼なんて……」
「私がしたいの。……この手袋、すごくあたたかいから」
「お嬢様……ありがとうございます」
「ルカが好きな色って……緑系?」
「そうですね。落ち着いたモスグリーンが好きです」
「気に入るマフラーがあるといいね」
「ふふ、お嬢様が選んでくださったものならどれでも気に入りますよ」
「それじゃダメ」
伸ばされた指が絡んで。
手袋越しに体温が伝わる。
「レガーロ中のお店を探して、ルカに似合うマフラーを見つけるから」
「レガーロ中ですか? ふふ、それなら見つかりそうですね」
「うん」
手を繋いでフェリチータとマフラーを買いに出かける。
その幸福を噛みしめるように、繋いだ手を優しく握り返した。