Dolcetto o Scherzetto!

ルカフェリ15

「Dolcetto o Scherzetto!」

小さな子どもたちの元気な声に、笑顔でお菓子を配るのは魔女に扮したフェリチータ。
今回のピッコリーノはハロウィンが近いということもあり、教会ではささやかなハロウィンが行われていた。

「ありがとう、お姉ちゃん!」

嬉しそうにお菓子を握りしめて手を振る姿に微笑んで、そっと籠の中を見る。
楽しいことが大好きな子どもたちはたくさん『決まり文句』を告げてくれたので、籠の中はからっぽになっていた。

「お疲れ様です、お嬢様」
「ルカ」
「子ども達もみんな帰りました」
「そう」

フェリチータの空の籠を受け取ると、手際良くあたりを片付けていくルカに並び手伝って。
ふと、思いついた言葉を告げて見る。

「Dolcetto o Scherzetto?」
「ふふ、お嬢様の分はちゃんと別に用意してあります。館に戻ったらお茶と一緒に食べましょうね」

用意のいいルカはしっかり彼女の分も用意していたらしい。
それを嬉しく思いつつ、子どもの頃と変わらない扱いに少しだけムッとして。

「……今持ってないなら悪戯してもいいよね」
「え? ……ん……っ」

ちゅ。軽く触れあうだけのキスをして。
逃げるように立ち上がる。

「……あっちを片付けてくるね」
「あ……待ってください!」

慌てて立ち上がったルカに手を掴まれて。
逃げることに失敗したフェリチータは、恥ずかしそうに目を背けた。

「Dolcetto o Scherzetto?」
「え? ……あ」
「フェリチータも今、お菓子を持っていませんよね?」

微笑むと、距離を詰められ、彼女がしたよりもずっと大人のキスが贈られる。

「……甘い、ドルチェですね」
「……ばか」
こぼれた吐息が恥ずかしくて俯くも、今度は逆に腕を引いて、そっと耳元で囁く。

「……帰ったらもっと、味わってくれるでしょ?」

   * *

「……おーい。お嬢ー、ルカちゃーん」
「あいつら、完全に俺たちのこと忘れてやがる……」
「……リベルタ、鼻血を拭け」
「……え? おおっ!?」

ルカやフェリチータと同じくピッコリーノの当番だったパーチェ達ファミリー面々は、仲睦まじい二人の様子にさっさと先に館に帰っていった。
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