Buon Compleanno amore mio

ジョリフェリ3

今日は朝から沢山のお祝いを受けた。
まずは起こしにきたルカが、目覚めの紅茶と共におめでとうを告げてくれて、その後もファミリーからはもちろん、次期領主であるアルベルト、さらに巡回中島民からかわるがわるお祝いの言葉をかけられてと、今日一日で沢山の祝辞を受けた。

ルカとマンマと3人だけで祝っていた昨年とはあまりにも違くてほんの少し戸惑ってしまうけれども、それでも喜びの方が勝って胸がほんわりあたたかくなる。
自分はなんて幸せなのだろう。
パーパやマンマだけでなく、ファミリーのみんなにも、レガーロ島のみんなからも祝われて。――だからこそ強く思う。

「しっかりしなくちゃ」

まだまだ自分が未熟であることはわかっている。 だから甘えることなく、みんなの思いを受けられる存在になること。 それがフェリチータが返したいお礼だった。

「こんなところにいたのか」
「ジョーリィ」

土を踏む音に振り返れば、最近すっかり嗅ぎ慣れてきた煙草のにおいと共にジョーリィが歩いてくる。
夜に溶け込むようでいながら、その存在をはっきり映し出す夜空の月のような――フェリチータの大切なひと。

「どうしたの?」
「主役不在ではただの騒々しい場でしかないからな。これ以上付き合う必要はないだろう」

始めこそみんなフェリチータを取り囲んでいたが、今ではすっかり酒宴に変わっていた。
当然酒が苦手なジョーリィには面白いはずもない。

「夜も更けてきたし、もう戻らなくても大丈夫だと思う」

ここから先は酒をたしなむものだけでいいだろう、そう思ったフェリチータは相談役の不在を咎めることをやめた。

「月が綺麗だね」

夜空に浮かぶ煌々とした月を見上げれば、隣に並び立つ気配がして。
ふと視線を移すと、その顔にいつもかけているサングラスがないことに気づいた。

「お嬢様が今、口にした言葉を、ジャッポネではある言葉の意味として使われたという話を知っているかな?」

突然の座学にふるりと首を振ると、黒い手袋を嵌めた手が頬に触れて。
覗き込む紫の瞳に意識が奪われる。

「では、その意を調べることをお勧めしよう。今後、お嬢様が他の者に安易に口にすることのないように、ね」

ふと差した陰に、一瞬のぬくもり。
それが何かをフェリチータが認識する前に、陰もぬくもりも消えていて。
視界に映るのは、いつものようにサングラスをかけた男の姿。

「次は意を介して君が告げてくれるのを待っているよ――私の花嫁」
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