「これをこうして……」
アクセサリー作りに没頭していたリベルタは、コンコン、とノックする音にドアを振り返った。
「はーい」
「リベルタ? 入ってもいい?」
「え? お嬢!? あ、え、うわ……っ!」
思いがけない来訪者に慌てると、ベッドの上の小さな飾りが音をたてて転がり落ちた。
「リベルタ!?」
「あーお嬢! 動くな! ちょっと動かないでくれ!」
「? うん」
慌てて駆けこもうとしたフェリチータがドアのところで立ち止まると、リベルタは周囲に落ちた飾りをひとつずつ拾い集め数を数える。
「あれ? 仕上げの飾りがないぞ」
「リベルタ、これ」
フェリチータはしゃがみ込むと、傍に落ちていた石を拾いあげ差し出した。
「おーこれだ。ありがとな、お嬢!」
「アクセサリーを作ってたの?」
「あー……あ、ああ。お嬢は今日、休みなのか?」
「うん」
問いに一瞬口ごもるリベルタに、フェリチータは首を傾げつつも頷いた。
「リベルタもお休みだってダンテから聞いたから、どこか出かけようって誘いに来たの」
「え? そうだったのか? あーごめんな、お嬢」
「ううん。急だったから。また誘うね」
「あ! 待ってくれ、お嬢!」
じゃあね、と踵を返しかけたフェリチータを引き留めて、ソファへ腰を下ろさせた。
「もう少しでできるから、そうしたら一緒に出掛けられるから。少しだけ待っててくれるか?」
「うん」
「ありがとな」
にこりと微笑んでくれるフェリチータに安心して、残りの作業を急ぎ足で進める。
今回はネックレスのため、普段より使う飾りは少ないのだが、ペンダントトップに細かな飾りを施しているため、集中力を必要とした。
「それ、リベルタの? それとも誰かに頼まれたもの?」
「え!? あ、あ~そうなんだ」
妙に口ごもるも、フェリチータは特に不審には思わなかったようで、リベルタは内心胸を撫で下ろした。
(ごめん、お嬢。嘘ついて。でも、まだ言えないんだ)
偽りを口にすることに良心が痛むが、それでもどうしても完成までは知られたくない。
そのためにリベルタは慣れない嘘を口にして、必死に手元を動かした。
「――できた!」
完成したアクセサリーに満足げに微笑むと、リベルタは傍らに座るフェリチータに向き直った。
「お嬢、受け取ってくれ」
「私に? いいの?」
「ああ」
出来あがったばかりのネックレスを手渡すと、フェリチータは嬉しそうに微笑んだ。
「綺麗な石……」
「本当は赤い石を使おうと思ったんだけどさ。お嬢にはその色をつけてもらいたくて変えたんだ」
「うん、すごく綺麗。でもどうして?」
「あー……え……っと」
不思議そうに見つめるフェリチータに、リベルタは頬をかくと照れくさそうに口を開いた。
「お嬢がそのネックレスをつけてるところを想像してさ。その、首元に揺れるのが自分の色だったらすげー嬉しいんじゃないかって、そう思ったらその石買ってたんだ」
確かにペンダントトップにひときわ輝く石は、リベルタの瞳を映したような綺麗な空色で。
リベルタのその想いが嬉しくて、フェリチータは大切そうに掌で包み込んだ。
「……うん。私も……嬉しい」
「本当か?」
「うん」
フェリチータの答えに、リベルタははあ~と大きく安堵の息を漏らす。
「なんか独占欲みたいに思われたらどうしようって、ずっと悩んでたんだよ。だからお嬢がそう言ってくれてほっとした」
「私も、リベルタの傍にいさせて?」
「え!?」
そっと指が絡まって。
肩に感じる重さが、繋いだ手から伝わるぬくもりがどうしようもなく照れくさくて……嬉して。
そっとその肩を抱き寄せた。