dolente

パフェリ2

【注意!】
このお話はパフェリ前提ですがED2を受けての話なのでパーチェは出てこず、アッシュが介在しています。
【パーチェ×フェリチータ←アッシュ】の構図がお気に召さない方もお読みにならないようご注意ください。






「ふぅ……」
最後の書類を終えたフェリチータが、深いため息をつく。
モンドの後を継いでドンナとなって数年。
始めは惑うことばかりだったが、ファミリーやアルベルトの協力もあり、レガーロの領主として立つことが出来ていた。けれど……。

「…………」

ふと、頭によぎるのは、大切なあの人のこと。
ラ・フォルツァによって【永遠】の時を与えられたパーチェは、フェリチータに忘れ形見を残して彼女の傍から離れた。
【永遠】を生きる彼と、フェリチータ達の【時間】は重なり続けることがないから。
2人の子どもに辛い現実を見せることを望まず、皆の幸せな笑顔を守りたいとパーチェが選んだ道が【別離】だった。

「……ふ……っ…」

喉の奥から漏れる嗚咽。
頭は理解していても、心は時折こうして血を流す。
あの時、ラ・フォルツァと対峙した時、フェリチータが勝っていれば、道を違えることはできたのだろうか?
絶えずその問いが胸の奥に渦巻いていた。
この別離は、フェリチータの弱さが招いたもの。
パーチェと共にある未来を失わせたのは、フェリチータの傲慢な願いだった。

「……っ………パーチェ……ッ」

泣いてはいけない。自分はドンナ。このレガーロを守り、統治する存在。
そして、彼の忘れ形見を支える母親。
それでも涙は溢れて止まらず、フェリチータは一人嗚咽を噛み殺した。
そんな彼女の前で開かれたドア。
涙に濡れる瞳に映ったのは……アッシュ。

「……アッシュ?」
突然開いたドアに茫然と見返せば、無言で歩み寄ってくるアッシュ。
そうして傍に立ったと思ったら、ぐいっと強く抱き寄せられた。

「……一人で泣くぐらいなら、俺を呼べよ」
「………っ」
「俺が嫌なら帽子野郎でも、ひよこ頭でも、他の奴でもいい。お前の傍にはお前を支えるやつが大勢いるだろ?」
「………いないよ」
「ああ?」
「パーチェが……いない……」

そう。傍にいて欲しいのはパーチェ。
ファミリーのみんなのことは大好きだけど、傍にいて欲しいと願うのは彼だから。
乾かぬ涙に、抱き寄せる腕の力が強くなる。

「……忘れちまえよ」
「……え?」
「そんなに辛いなら忘れちまえばいい」
「……無理だよ」
「無理じゃねえ。そんな憔悴したお前なんか見たくねえんだよっ」
「……ごめ……ん……っ」
「謝んなっ。……くそ」

苛ただしげに舌打つ姿に、けれども抱き寄せる腕はどこまでも優しくて、その腕にすがりついてしまいたくなる。

「……ふ……ぅ……っ…」

崩れる、心。
彼の愛したレガーロを、そこに住む人々を、ファミリーを、子ども達を守りたい。守ってみせる。
その想いがフェリチータをずっと支えていた。
パーチェと重なるその想いが、崩れそうになる気持ちをずっと支えていた。
けれども……パーチェがいない。
その事実が時折こうして押し寄せては、フェリチータの心を崩す。

揺らぐ視界で、重なる唇のぬくもり。
涙に濡れて揺れる世界に映るのは、今は傍にいないあの人。
それが偽りだと知りながら、その痛みから目をそらして。
目の前に差し出された腕を一時、抱き寄せた。
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