Dolcetto o Scherzetto

パフェリ1

「Dolcetto o Scherzetto!」
突然の大声に、フェリチータはペリドットの瞳を丸くすると、目の前でにこにこと微笑むパーチェを見上げた。

「パーチェ?」
いきなり何を?、そう視線で問いかけると「あれー? お嬢、忘れてるの?」と問い返された。

「???」
忘れてる……パーチェと約束していた覚えはない。
そういえば、先程なんて呼びかけられた?

「Dolcetto o Scherzetto……あ、ハロウィン?」
「そう! 見て見て、似合ってる?」
パーチェが纏っているのは……犬の着ぐるみだろうか?

「うん、可愛い」
「え? お嬢、怖くない?」
「? うん」
「これ、一応狼なんだけどなぁ」

しゅん、とうなだれるパーチェにもう一度見つめるが、やはり犬にしか見えない。
ふとある動物の姿が浮かんできて、フェリチータはくすくすと肩を揺らした。

「お嬢? どうして笑ってるの? え? どこかおかしなところでもあった?」
「パーチェ、ゴールデンレトリバーに似てる」
「えー?」

最初に声をかけてきた時も、ぶんぶんとしっぽを振って嬉しそうに駆けてくるようだったと思い返すと、つい笑みがこぼれてしまった。

「うーん、まあお嬢が楽しいならいっか。で、お嬢はどっち?」
「?」
「Dolcetto o Scherzetto! お菓子? 悪戯?」
「あ」

そうだ。こう呼びかけられたらお菓子をあげなければならないのだ。
だけどフェリチータは今巡回から帰ったばかり。
当然仕事中に菓子など持ち歩いているわけはない。

「ん? お嬢、お菓子持ってないの?」
「うん」
「あ、でも甘いものならあるね」
「?」

にっこり笑うパーチェに小首を傾げると、ずいっと顔が近寄って。
食む、っと口づけられた。

「!」
「やっぱりお嬢はどんなドルチェよりも甘い。まるでティラミス~のようだ……ってお嬢!? どうして蹴るの?」

不意打ちのキスの恥ずかしさにすかさず蹴りを繰り出すと、パーチェがきゃんきゃんとわめく。

「お嬢様? ……とパーチェ? どうしたんですか、その格好は」

「あールカちゃん! Dolcetto o Scherzetto! お菓子頂戴! 山盛りでくれなきゃ悪戯するぞ!」

「え? お菓子……って山盛りですか!?」

「もちろん! ね、お嬢もルカちゃんのドルチェ食べたいよね?」

幸せそうに振り返ったパーチェに、こくんと頷き微笑んだ。

「……わかりました。ではお嬢様は先にお着替えを。パーパから今日の衣装がお部屋に届いています」

「パーパが?」

「はい。お嬢様と初めて館でハロウィンを過ごせると、大はしゃぎでしたから」

 ルカの話にまたもモンドが親バカぶりを発揮したのかとため息をつくと、パーチェがにこにこと手をとる。

「ほら、お嬢も早く着替えようよ! どんな衣装か楽しみだよね」

周りを明るく包み込むその笑顔に、フェリチータもつられて笑みをこぼす。
いつもは黒のスーツに身を包んでいるファミリーも、今宵は思い思いの仮装で楽しんで。
賑やかで、楽しいハロウィンをフェリチータは過ごした。
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