アルカナ・ファミリア円卓の間。
集いし者はタロッコと契約し者たち。
「第9のカード、『レルミタ』」
「ああ」
「第14のカード、『ラ・テンペランツァ』」
「ここに……」
「そしておれ、第11のカード『ラ・フォルツァ』、全員いるな」
いつものように出欠の確認を取ると、デビト・パーチェ・ルカの幼馴染3人は本日の懺悔を行う。
「じゃぁ……本日の懺悔を行う。我々は第21のカード『イル・モォンド』の求めに従い、この一日『レガーロ』のために尽くしてきた。
だが、我々の中にひとり、望ましくない選択をした者がいる。
その、罪深きひとりが誰であるのか――我が『アルカナ・ファミリア』の血の掟に従い、この……カードによって決議する。
では……裁きを受けるべきものをカードで示せ」
場を取り仕切る『ラ・フォルツァ』ことパーチェの言葉に、全員が一枚のカードを円卓に置く。
「「節制」」
「力」
「2対1で『節制』……今宵の罪人はおまえだっ、『ラ・テンペランツァ』」
多数決で示されたカードは『節制』……お嬢様の忠実なる従者であるルカ。
「私ですか!? ちょっと待ってください? なぜ、私なんです!?」
「それは『ラ・テンペランツァ』が大嘘つきだからだよ!」
「大嘘つきって……私が何の嘘をついたというんです?」
ビシッと指差すパーチェに、ルカは慌てて記憶を巡るが思い当たる節はない。
「忘れたとは言わせないよ。あれはそう、おれがまだアルカナ・ファミリアに入って間もない頃……」
「『ラ・フォルツァ』たちがファミリーに入った頃ですか? それでしたら、私はすぐにお嬢様と暮らし始めたと思いますが……」
「それだよ! 掟だとか言われて11年間ずーっとおれ、お嬢に会うのを我慢してたんだよ。なのにリベルタやノヴァなんかしょっちゅうお嬢に会いに行ってたんでしょ?」
「それは……ノヴァはともかく、リベルタは別にしょっちゅうというわけでは……」
「でも! 会いには行ってたよね?」
「それは……まあ……」
「俺たちには掟がどうとか言って会わせなかったのに、それが嘘だったとわかった時にはなア? 幼馴染に嘘をつかれてたなんて、繊細な心がぐっさりと傷つけられたよなア?」
「あなたたちのどこが繊細なんですか!」
「ともかく! 『ラ・テンペランツァ』が嘘をついていたのは事実だ。これは裁かれるべきだよね」
「う……っ」
「ってーかよ。なんで俺たちにだけバンビーナに会わせなかったんだ?」
デビトの素朴な疑問に、ルカは一瞬口ごもると、キッと二人を見つめた。
「それは……お嬢様をあなたたちの毒牙から守るためです!」
「毒牙って……さすがに『レルミタ』だって10歳の子を口説いたりはしないよ」
「では、成長したお嬢様にも手を出さないと言い切れますか?」
「それは……まあ、ねえ?」
「一から自分好みの女に育てるってのもわるかぁねえな」
「それです! そんなだからあなたたちには絶対会わせたくなかったんですよ!」
「『ラ・フォルツァ』、『ラ・テンペランツァ』は自分の非を認めねえようだぜ?」
「それはよくないよね。厳重な罰を受けてもらってよーく反省してもらおう」
「な、なにをさせる気ですか?」
警戒するルカに、パーチェとデビトは顔を見合わせるとにたりと嫌な笑みを浮かべた。
「『ラ・テンペランツァ』の断罪は、1週間お嬢の傍に近寄らないことだ!」
「ええええええええ!!!」
ガーンと衝撃を受けるルカ。
お嬢様命のルカにとっては、1日でさえ耐えられない罰だろう。
「お、お願いします。せめて1時間にしてください!」
「1時間のどこが罰なんだよ。俺たちなんて11年間だゼ?」
「そうそう。それを1週間で許してあげるって言ってるんだよ? おれたちって優しいよね~」
「どこがですか! お嬢様は私のライフワークなんです! すべてなんです!」
「あ、それ、もうだめだから。なんたってお嬢はおれのお嫁さんだからね」
「はう……っ!」
「……死んだか?」
とどめの一言に燃え尽きたルカを横目で見やると、やれやれとデビトは立ち上がった。
【本日のみせしめ議題】
偽りで長年幼馴染をだましていたルカ。
【罪人】
ラ・テンペランツァ→罪状:嘘はいけないよ