見せしめ1

ファミリー2

アルカナ・ファミリア円卓の間。
集いし者はタロッコと契約し者たち。

「はじまりのカード『イル・マット』」
「おう」

「第13のカード『ラ・モォルテ』」
「ああ」

「第9のカード『レルミタ』」
「ああ」

「第11のカード『ラ・フォルツァ』」
「いるよ」

「第14のカード『ラ・テンペランツァ』」
「ここに……」

「第4のカード『リンペラトーレ』」
「うむ」

「第18のカード『ラ・ルーナ』」
「ああ……」

「そして私……第20のカード『イル・ジュディツィオ』と第21のカード『イル・モォンド』……全員いますね」

いつものように出欠の確認を取ると、『リ・アマンティ』を除く大アルカナ9人は、本日の懺悔を行う。

「では、懺悔を始めます。我々は第21のカード『イル・モォンド』の求めに従い、この一日『レガーロ』のために尽くしてきました。
ですが、我々の中にひとり、望ましくない選択をしたものがいます。
その、罪深きひとりが誰であるのか――我が『アルカナ・ファミリア』の血の掟に従い、この…カードによって決議する」

場を取り仕切る『イル・ジュディツィオ』ことスミレの言葉に、全員が一枚のカードを円卓に置く。


「「「「「「「世界」」」」」」」

「月」

圧倒的多数で示されたカードは『世界』……ファミリーのトップであるパーパことモンド。

「決議しました。8対1で今宵の罪人はあなたです、『イル・モォンド』」

「なんだと!? なぜ俺なんだ! 罰を受けるべきなのは『ラ・ルーナ』だろう!」

「う~ん、まあそうなんだけどさ」

「言っても無駄っていうか……ねえ?」

「今に始まったことじゃねえしなぁ」

「それに何よりお嬢さんが共犯じゃな……」

「待ってください! 共犯とはなんですか! 『リ・アマンティ』は『ラ・ルーナ』にそそのかされているだけです!」

「そうだ、『ラ・テンペランツァ』! 大事な娘をかどわかした『ラ・ルーナ』こそ裁かれるべきだろう!」

お嬢様命のルカが激しく異を唱える様に同調するも、妻であるスミレは微笑みを浮かべ夫に追い打ちをかけた。

「『イル・モォンド』がもう少しちゃんと躾けてくれていれば、『リ・アマンティ』も安心して任せられたのよねぇ」

「『イル・ジュディツィオ』!」

「そうそう。『イル・モォンド』がちゃんと『ラ・ルーナ』を教育しなかったから、みんな被害を被ってるんだもんね」

「確かに、ファミリー内だけでなく島の安全を守るべきファミリーの者が逆に脅かしてるのは事実だ。諸悪の根源は誰か、というのであれば責められるべきは『イル・モォンド』だろう」

「『ラ・モォルテ』! お前まで俺が悪いというのか!?」

スミレにパーチェが加勢、さらにはノヴァにまで責められモンドが唸った。

「『ラ・ルーナ』の性格は天性のものだ。よって俺に罪はない!」

「確かに以前、お前は『他人の神経を完膚なきまでに逆なでする、天性の手腕』と『ラ・ルーナ』のことを言っていたな」

「ああ、そうだ! それに『ラ・ルーナ』ももういい大人だ。いまさら親が責任をとるような年ではないだろう」

「それに関してはお前が言っていたのではないか? 『イル・モォンド』」

「なんだと?」

「親はいつでも子を心配するものだ、とな」

「く……っ」

人のあげあしを嬉々として取るジョーリィに、モンドはギリギリと歯ぎしりする。


「では断罪を命じます。今日から一週間、『イル・モォンド』は『リ・アマンティ』と『ラ・ルーナ』が共にいる時は必ず同席すること」

「………は?」

スミレから申しつけられた断罪に、いち早く反応したのはジョーリィ。


「待て、『イル・ジュディツィオ』。これは『イル・モォンド』の断罪だろう。なぜ私が……」

「あら? あなたの監督不行き届きを問われているのだから当然でしょう?」

「そういうことか……ふっふっふ……。わかったぞ! 一週間張り付いて邪魔しまくってくれるわ!」

さっきまでの打ちひしがれた様子から一転、お邪魔虫宣言に熱意を燃やすモンドにジョーリィの眉が不機嫌に歪む。
それから一週間、ひたすらに二人の邪魔をしてますますフェリチータからモンドが嫌われたのは言うまでもない……。


【本日のみせしめ議題】
ヴァスチェロ・ファンタズマ号の一件以来、人目を全く気にせずフェリチータといちゃつくジョーリィ。

【罪人】
イル・モォンド→罪状:『ラ・ルーナ』の監督不行き届き
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