「…ん……」
ふと感じた視線に、重い瞼をゆっくり開く。
「……ん? 起きた?」
「……トーマ……?」
柔らかく微笑むトーマに、どうして彼が一緒に寝ているのだろうと、まだ覚めない頭でぼんやりと考える。
「お前、まだ寝ぼけてるでしょ?」
「……うん……そう、かも……」
うとり、うとりと、再度閉じかける瞼に苦笑する気配がして、そっと頭を撫でられた。
これはトーマの感触。
昔から変わらない、絶対の安心をくれる手のぬくもり。
「眠い?」
「……うん……もう少しだけいい?」
「いいよ。でも少しだけだぞ?」
「……ありがとう」
優しく髪を梳く手が気持ちよくて、ついつい甘えてしまう。
ぬくもりを求めるようにすり寄ると、トーマが慌てる気配が伝わってきた。
「おま……っ、それはまずいって……!」
「……? トーマ?」
どうしてそんなに慌てるの? と問おうとして。
触れた指先の感触に、急速に意識が覚醒していく。
「………!」
ぱちりと瞼を開けると、目の前にあるのはたくましい裸の胸。
そのことを認識した瞬間に固まった私に、トーマははぁとため息をつくと、おずおずと聞いてきた。
「……身体、辛いとこないか?」
「………っ!!」
問いかける言葉によみがえる昨夜の出来事。
一気に全身が真っ赤に染まり、きゅっと固く目をつむった。
「だ、だいじょう……ぶ」
「そっか」
何とか答えるとホッと小さく息を吐いて、トーマが私を抱きしめた。
「……お前っていいにおいするよね」
「そ、そう? シャンプーの香りだと思うけど……」
すん、とにおいを嗅ぐトーマに、ドキドキと胸が早鐘を打つ。
トーマと肌を合わせた朝はいつも緊張してしまう。
初めての時と変わらないぐらい恥ずかしくて……でも嬉しくて。
そっと視線をあげると、私を見つめていたトーマと目があった。
「……そんなに照れられると、俺も恥ずかしいんだけど」
「ご、ごめん……っ」
「いいよ。照れてるお前も可愛いから」
「…………っ」
愛しげに細められた琥珀の瞳。
小さい頃から大好きなトーマの瞳。
「……でも、そろそろ起きないとまずいかな」
「? 今日は大学早いの?」
「いや、そういうことじゃなくて……」
今日は私もトーマも午後からのはず。
そう思って見上げていると、ちゅっと額にキスが降り落ちて、そのまま唇が重なった。
「朝からそんな可愛い顔見せられたらたまらなくなるでしょ。ただでさえお互い、昨夜のままだって言うのに」
「…………っ」
そう、服を着ていないのはトーマだけじゃない。
私も昨夜肌を合わせたまま、何も纏っていないのだから。
「……だから、そういう顔するんじゃないの」
「ん……ふ……ぅ……っ」
再度のキスは深くて舌を絡め取られ。
目覚めた意識は、あっという間に蕩けさせられて。
「ごめん……止められない」
いい? と問われて、その背に腕を伸ばして了承の意を伝えた。