甘い本音と甘い嘘

イッキ1

「ねえ、僕のこと、好き?」
じっと見つめて問いかけて。
揺れる彼女の瞳に、頷いてほしいという願いと、正反対の頷かないでほしいという思いが交差する。

自分の瞳が異性にどのような影響を及ぼすのかは、もう嫌というほどわかっていた。
だからこそ、この瞳の影響を受けない彼女は特別だった。
だからこそ、この瞳の影響ではなく愛してほしかった。

けれど、その想いが届いたと思った翌日、彼女の態度が急変した。
約束の三ヶ月の間に確かな想いを築きたい……そう思って積み重ねてきたはずなのに、突然彼女からつい先日感じた想いが感じられなくなったのだ。
約束の期限はもう間近。
僕はとっくに彼女に惹かれている。
けれど同じ想いを彼女に抱かせることはできなかったのか?

「この瞳が君にも効けばいいのにね」

呟きは本音であり、嘘でもある。
この瞳が彼女に効けばいい。
けれども、本当は効いてほしくない。
彼女に求めているのは、ただ純粋に僕という人間を見て、そこから生まれる愛情だから。

「僕は君が好きだよ」

だから、君も僕を好きだと言って?
でもどうか、この瞳に浮かされた想いは聞きたくないから。
彼女の愛が得られるのならば、瞳の力が効いてほしい。――効かないで。
甘い本音と、甘い嘘。
その二つを同時に呟きながら、僕はただひたすらに君を求める。
――君が、僕を愛してくれることを。
Index Menu ←Back Next→