朝の光に照らされた翠色の髪。
ウキョウの顔を覆い隠すように流れる髪をそっと梳くと、ぴくりと肩が震えた。
「…ん……」
「おはよう、ウキョウ」
「……うん……おはよう……って……あれ? ……君? ……え? え? ……ど、どうして君が一緒に寝てるの!?」
ぼんやりと夢の世界をさまよっていた翡翠の瞳が大きく見開かれた瞬間、うろたえ始めたウキョウに、私はゆっくりと微笑んだ。
「……そう、だ。昨夜、君は俺の家に泊まったんだったね」
「うん」
取材でしばらく会えなかったウキョウが帰ってきた昨日、翌日が休みということもあって私は久しぶりにウキョウの家に泊まっていた。
「朝ご飯作るね」
「あ、ちょっと待って」
「ウキョウ?」
「もう少し、こうしていよう? しばらく会えなかったから、ゆっくり君を抱きしめてたい」
「……うん」
優しく包み込むように抱きしめるウキョウに身を委ねて。
頬に伝わる鼓動に、幸せを感じる。
「……まだ時々夢かなって……そう思う時があるんだ。目覚めたと思ってるこの世界はまだ夢の中で、目覚めたら本当は一人なんじゃないかって……すごく怖くなる」
「夢じゃないよ。私はウキョウの傍にいる」
「……うん。君は俺の傍にいるね」
ほんの少し力が入った腕に、今までのウキョウの苦しみや悲しみを感じて、その頬に手を伸ばした。
「もう大丈夫だから。ウキョウが未来を作ってくれたから」
辛く苦しい繰り返しの日々はもう終わったの。
そう告げると、ウキョウが困ったように視線を泳がせた。
「うん。ありがとう。……その、ちょっと離れた方がいいかも」
「え?」
「えっと……目のやり場に困るっていうか、あ、もちろん君を抱き寄せてることが嫌なわけじゃないんだよ?
そうじゃなくて、その、全部見えて色々困るっていうか……」
「!」
「ご、ごめんっ」
「う、ううん。私の方こそごめんなさい」
ウキョウが言わんとしていたことに今更ながらに気づいて、慌てて伸ばしていた手を引くと、肩まで布団をかきあげた。
今、私もウキョウも何も着ていない。
昨夜肌を合わせたまま、全裸で眠ってしまったから。
そのことを認識するや羞恥心が膨らんで、急速に頬が熱をはらむ。
肌を合わせた後はそのぬくもりが愛しくて、離れることが寂しくて、ついついそのまま身を寄せ合って寝てしまうのだ。
「えっと……そうだ、俺のシャツでよかったら着る? 昨日シャワーを浴びた後に着替えたのだから綺麗だし!」
「う、うん。でも……」
一生懸命気遣ってくれるウキョウにすり寄ると、甘えるように彼がかけているシャツを引っ張る。
「……もう少しだけこうしてたいな」
「……うん。俺も、君を抱きしめていたい」
服越しではない、互いの肌のぬくもりが気持ちよくて、幸せで離れ難い。
そんな小さなわがままを許しあえる関係がとても愛おしかった。