「……、――」
重ねられる唇を受け止めながら、どうしようかと悩む。
ようやく正常(?)な夫婦生活を送れるようになったばかりで拒んでは、また先日の状況に逆戻りしそうで困るけれど、だからといって半日寝込むほど体が痛い現状では受け入れるのも難しい。
(うう……みんなどうしてるんだろう? こういうことって毎日あるものなのかな?)
仲謀に求められることが嫌なわけではない。
けれども体が辛いのも事実で、それでも夫の求めに応じるのが新妻の務めなら、拒むのはまずいだろうとぐるぐる考えていると、いつの間にか口づけが終わっていて、はぁと仲謀が大きく息を吐いた。
「仲謀?」
どうしたのか聞こうと口を開きかけるとちらりと視線を向けられ、ばつが悪そうに仲謀が身を起こす。
「……今日はしねえから安心しろ」
「え?」
「昨日は無理させちまったからな。お前に辛い思いをさせたいわけじゃねえし」
花の体調を慮ってくれていることに気づくと、ごめんと眉を下げた。
「謝るな」
「だって……」
「夫が妻を気遣うのは当然だろ。それに、お前が寝込んだ原因は俺が加減できなかったせいだからな」
夜の営みというものがどういうものかわからない以上、仲謀が暴走したのかどうかわからないが、少なくとも嫌ではなかったのだからそれは伝えなくてはいけないだろうと、裾を引くと仲謀を見上げる。
「あの……確かに体は痛いけど、その、嫌じゃなかったからね?」
「……っ、だから、なんでそういうこと言うんだよ」
「え? だって、嫌がられてるって勘違いされたら困るし……」
「人がせっかく我慢してるのに煽りやがって……頭に血がのぼったら気遣うなんて無理だってわかっただろ」
「そんなことないよ。仲謀は優しかったよ? ……たぶん」
「たぶんってなんだよ」
「だって初めてだったし、恥ずかしくてよくわからなかったし……」
「…………っ」
他の人に裸を見られるなんてなかったし、ましてや男の人に触られるなんて初めてだったから、とにかく恥ずかしくてずいぶん仲謀を困らせてしまった。
けれども、いつものように怒ったりしないで、宥めるようにいっぱいキスをされて。
少しずつ思い出された初夜の様子に顔を赤らめると、花と同様に思い出したのか、仲謀の顔も赤くなる。
「お前を寝込ませたらまた周りが騒ぎ立てるだろ。だから、今日はしねえ。……けど、その、大丈夫になったら教えろよ」
「う、うん……」
直情的な言葉に恥ずかしくて仕方ないが、自分のことより花を優先してくれることが嬉しくて、とん、とその肩先にもたれる。
びくりと仲謀の動揺が伝わるが、それでも言葉を違える気はないようで、真っ赤な顔で寄り添う姿に、仲謀が好きだと想いを新たにした。
2018/01/19