看病

仲花20

「花、大丈夫か?」
「仲謀」
目を覚まして、人の気配を感じて顔を向ければ、そこには仲謀がいて、花は申し訳なさそうに眉を下げた。

「ごめん」
「なんでお前が謝るんだよ。元凶は大小だろ」
「ううん。私がつい気持ちよくて長く居すぎちゃったからで、大喬さん小喬さんのせいじゃないよ」

仲謀と結婚して初めて迎えた夏。
当然こちらの世界にクーラーなどあるはずもなく、暑気当たりを起こしていた花に、大喬小喬が水遊びを勧めてくれたのだが、かなや彩とプールに行った時のように賑やかで楽しく、ついつい長く水に浸りすぎてしまった結果、花は風邪をひいてしまったのだった。

「熱はどうだ? ――まだ熱いな。医者には診てもらったんだろ?」

「うん。風邪だって。今回は喉も痛くないし、熱だけだから大丈夫だよ。それよりうつると大変だから、もう仕事に戻った方がいいよ」

「そんなの気にしなくてもいい。水、飲むか?」

「うん」
身体を起こすと支えてくれる仲謀に礼を述べて、差し出された水を受け取り喉を潤す。
掌に感じる熱さが身体にこもった熱を感じさせて、花は気だるげに瞬いた。

「まだ辛そうだな。ほら、寝ろ。――ちゃんと休んで、早く治せよ」
「うん。ありがとう」
支えられながら再び身を横たえると額を撫でられて、その手の冷たさに目を閉じる。

「花? 辛いのか?」
「ううん。仲謀の手、冷たくて気持ちいい……」
「な……ッ」
「? どうしたの、仲謀?」
「――そんな顔で、そういうこと言うな。我慢できなくなるだろ」
「え!? だ、だめだよ?今は無理だからね?」
「わかってる! 病人を襲うわけねえだろっ」

真っ赤な顔で否定する仲謀を一瞬疑ってしまったのは、初夜にかなり激しく求められ、半日寝こむ羽目になったからだが、それでも体調の悪い花に無理を強いる人でないことは十分わかっていたので、花はうんと頷いた。

「お前、意外に体弱いよな」
「そんなことなかったはずなんだけど……」

それほど病弱だった記憶はないが、婚儀に続いて熱を出して寝込んでいる今の状況を思えば強く否定することもできず、申し訳なさそうに眉を下げる。

「ごめん」
「だから謝るな。別に責めてるわけじゃねえ」
「うん」
額に濡れた布巾を置いてもらうと、火照った体に気持ちよく、花はふうと息を吐いた。

「明日の朝、また様子を見に来る。辛くなったら我慢しないで女官を呼べよ」

「うん、わかった。仲謀もあまり無理しないでね」

真面目な仲謀は政務にも誠実で、それでもこうして時間を作り、寝こんでいる花の様子を見に来てくれていた。
病気の時は気が弱るというけれど、それは花も例外ではないようで、内心仲謀が傍にいないことを寂しく思っていたから、彼の気遣いが嬉しかった。

「じゃあ、戻る」
「うん」

去る前にもう一度布巾を濡らして額に置いてくれた仲謀に頷くと、花は素直に目を閉じた。
早く治して、また仲謀と一緒に過ごせるようにと願って。
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