冬の恋人たち

仲花16

比較的暖かいと言われる江東も、冬といえばやはり寒く、制服のスカートから出る足を隠すように、花は羽織った外套を掻き合わせた。

「う~やっぱり冬はコタツだよね……」

この世界に来る前なら、コタツに入りながらみかんを食べ、テレビを見る。
それが花の冬の過ごし方だった。
しかし当然ながらこの世界にコタツなどあるわけもなく、堪えられないと椅子に膝を立てて体育座りをしていると、入るぞと形だけ断りを入れて返事を待たずにドアを開けた仲謀が、うわっ! と驚き顔を赤らめた。

「おまっ……なんて格好してるんだよ!?」

「エッチ! 仲謀が返事を待たずにはいるのが悪いんじゃない!」

「エッチ? なんだよ、それ……じゃなくて、そんな格好で俺以外の奴が入ってきたらどうするつもりだ!」

「いきなり入ってくるのなんて仲謀しかいないよ」

「婚約者の部屋に来て何が悪いんだよ!」

会うやいつものように言い合いに発展した状況に、花は不満げに口をつぐんだ。

「……なんでそんな格好してたんだよ」
「……寒かったから」
「は?」
「だから、寒くて縮こまってたんだって」

花の返答に、仲謀は彼女の姿を見てはあ~と髪を掻きあげた。
確かに花の服装は、彼女の世界のものだという、足をさらけ出す短い衣を身に纏っており、寒いというのも頷けた。

「俺が贈った衣があるだろ。あれを着ればいいじゃねえか」

「だって、仲謀のくれた服は動きにくいんだもん」
この当時、足をさらけ出すファッションというのは珍しく、基本ロングワンピースのようなもので、さらにはごちゃごちゃと装飾品までつくので花は苦手だった。

「――だったら、これならいいだろ」
ぐいっと抱き寄せられ、急激に近くなった距離に花は驚き慌てる。

「ちゅ、仲謀? ちょっと、これは……」
「嫌々ばっかり言うんじゃねえよ。少しは素直に人の好意を受け入れろ」

そうは言っても、と抗議したいところだが、この行動が寒いという花をあたためるためのものだと思うと文句も言えず、仕方なく抵抗を諦めた。 伝わる人肌は確かにあたたかくて気持ちよく、ついすり寄ってしまう。

「おま……ッ」
「……あったかくて気持ちいい」
「…………ッ」

1つ年上(信じられないが)だという花は、しかしそうとは思えないほど幼い面があり、こうした無防備なところに仲謀はいつも振り回されていた。
それでも頼られることは嬉しくないはずもなく、他意なくその身を抱きしめる。

「そんなに寒いんだったら、俺のところに来ればいつでもあたためてやるよ」
「仲謀、そのセリフはエッチだよ」
「はあ? なんだよ、そのエッチって」

好意で言ってくれていることはわかったが、恋人にあたためてやるといわれて、はいそうですかと簡単に頷くほど、花も何も知らないわけでもなく、頬を赤らめ顔をそらす。
仲謀にそうした意図がないことはわかっていても、それはそれで女としては複雑なのである。

「おい、花。意味を教えろよ」
「え、えっと……」

意味を教えてしまえば怒られそうだし、教えなければ機嫌を損ねるだろうが、どっちにしても機嫌は悪くなるのなら気をそらしてしまえばいい。 そう結論を出すと、花は話題を変えることにした。

「あ、そうか」
「なんだよ」
「テーブルの上にのせられる、同じくらいの板って用意できないかな」
「は?」
「コタツを作ろうかと思って」
「コタツ? なんだそれ?」

首を傾げる仲謀に、花はコタツの説明をする。
その後、花の部屋ではコタツ(もどき)に入り、仲謀と仲睦まじく語り合う姿が見られた。
Index Menu ←Back Next→