仲花14

「はぁ……」
息を吐くと白く見える状態に、花は肩をふるりと震わせる。

「朝、寒くなったね」
「ああ、冬が近づいてきたんだろう」
「仲謀は暖かくていいよね」
「は?」
「そのもふもふ。夏は暑そうだなって思ってたけど、冬は暖かくていいよね」

花が指差すのは、仲謀の纏ったファー付きの上着。
孫家のものが代々身につける衣で、仲謀の母も尚香も着ているものだった。

「ちょっとこっちにこい」
「なに?」
「いいからこい!」

仲謀に呼ばれて近寄れば、差し出されたのは淡い薄紅の衣。
その襟元には仲謀と同じく、ファーが施されていた。

「仲謀?」
「お前のだ」
「え?」
「だから、お前のだって言ってんだよっ」
「だ、だって、これは孫家のものだけじゃ……」
「……お前、俺と婚儀を挙げたこと、忘れたとか言わねえよな?」
「あ」
今気づいた体の彼女に、苛立つ心を必死に堪えて花を見る。

「着てみろよ」
「え? 今すぐ?」
「ああ」
仲謀に急かされて、花は急ぎいつも着ている羽織物を脱ぐと、新しい衣に袖を通す。

「これは孫家のものとなったお前のものだ。これからはそれを着ろよ」
「……うん!」

顔に触れるファーが柔らかくて暖かい。
でもそれ以上に、仲謀の【家族】と認められたことが嬉しい。

「えへへ……」
「なんだよ、気味悪いやつだな」
「嬉しいんだよ」
「……っ、そ、そうか」
「仲謀? 顔、赤いよ?」
「うるさいっ! なんでもねえ!」
「もう、仲謀はすぐ怒るんだから……そういうところは直した方がいいよ?」
「……お前もその鈍感さをなんとかしろっての」
「? 何か言った?」
「なんでもねえ」

ほふほふと嬉しそうにファーに顔を埋める花に、仲謀は真っ赤な顔を隠すように手で覆いながらふっと微笑んだ。
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