繋いだ手を握り直して

平千3

「安くしてもらえて良かったね」
「だな」

久しぶりに買い出しに出ていた二人は、すっかり顔馴染みとなった店主に野菜を安くわけてもらい、笑顔で家路を歩いていた。
そうしてしばらく歩いたところで、ふと掌の温もりに平助は隣りを見た。
そっと手を掴む細い指。
けれどその表情は今にも泣きだしそうで、平助は焦り立ち止まった。

「千鶴? どうしたんだ?」
「……確かめたくなったの」
「?」
繋いだ手の意味がわからず首を傾げると、千鶴は悲しげに微笑んだ。

「前に平助くんが御陵衛士として離れていた時、茶屋で会ったことがあるでしょう?
あの時……手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、触れることが出来ないのが……すごく……寂しかったの」

久しぶりの再会。
だが、新選組と御陵衛士の接触は禁じられていた。
だから二人は初めて会ったふうを装い、他愛のない話をすることしかできなかったのである。
その時のことを思い出したのだろう、千鶴の顔に浮かんだ痛みに、繋がれている手と一緒に、両手を包み込んだ。

「……ごめん」
「ううん、謝らないで。平助くんがいっぱい悩んで選んだこと、知ってるから。それに、今はこうして触れられるもの」
「ああ」
微笑んで、指を絡めて握りしめる。

「俺はずっとお前の傍にいる。こうしていつだって手を握れるから」
「うん」
傍らの少女に笑みが戻ったことに安堵して、繋いだ手を握り直して家路を歩く。
二人はもう離れないのだと、そう確かめ合うように互いのぬくもりを感じて。
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