めおと

沖千11

「ねえ、千づ……」
千鶴の姿を求め、探し歩いていた沖田は、勝手場でうずくまる彼女の姿に息を詰めた。

「千鶴!」
「あ……総司さん……」
「どこか痛いところはない? 吐き気は?」
「大丈夫……です……」
顔を強張らせた沖田の質問に答える千鶴の顔は蒼白で。
さっと抱きかかえ、急ぎ寝室へと連れて行く。

「……すみません……」
詫びる言葉に大きく息を吐くと、そっと前髪を払い額に触れた。

「君は頑張りすぎ。少しは僕のことも頼りなよ」
「…………はい」

元々出来ることは自分でしようとする千鶴だが、労咳を患う沖田の身体を気遣い、必要以上に気負いすぎていた。
自分が健康ならばこうしたこともなかったのかもしれないと思うと歯痒くてしかたなかった。

「ねえ、千鶴。僕と君は夫婦だよね」
「は、はい」
「苦楽を共にする……楽しいことだけじゃない、苦しいことも共にするのが夫婦なんじゃないの?」
沖田の言葉に、千鶴が惑うように視線を泳がせる。

「いくら安静に、って言っても毎日寝てばかりじゃ気が滅入って仕方ないんだよね。まあ、君が僕のお願いを聞いてくれないなら、毎日隣りで寝て過ごすようにしてもいいんだけど」

「そ、それは無理ですっ」

「だったら、僕を頼ること。掃除は君の方が得意だから任せるけど、薪を割ったり一緒にご飯を作ったりぐらいできるんだから」

「でも総司さんは塩加減が大雑把すぎますから……」

「じゃあ君が片時も目を離さずにいなよ」

千鶴を労わる気持ちと、いつでも傍にいたいという想い。
それを感じて、千鶴はふわりと笑んだ。

「はい。わかりました」
「……君って本当にずるいよね」
「え?」
「そんな可愛い顔して手を出せないなんて、生殺しもいいとこだよ」

沖田の言葉に顔を青ざめたり赤らめたり慌てふためく様が愛しくて笑むと、そっと額に口づける。

「だから早く元気になって僕の相手をしてね?」
「………………はい」
込められた意味を正しく理解して戸惑うも、結局は頷く千鶴に沖田は満足げに頭を撫でた。
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