この想いは永遠に

沖千10

共に暮らし始めてからずっと、僕は彼女に触れることを迷っていた。
羅刹になっても治らなかった労咳は僕の身体を蝕み続け、いつか彼女を一人残してしまうのだとわかっていたからだ。
――千鶴は弱い。
芯はしっかりしているけれど泣き虫で、いつもその時に脅えていた。
これ以上の傷を刻む前に千鶴から離れるほうがいい。
誰に言われるまでもなく、そう理性は告げていたけど、心は激しく反発した。
彼女を手放したくないと。

そんな時、思わぬ人物と再会した。
井吹龍之介――かつて新選組に居候していた男。
知りすぎてしまった故に新選組を去らねばいけなかった彼を送り出したのは、他でもない自分だった。
その夜、僕は少しだけ千鶴に過去を話した。
それは全てではなかったけれど、彼女に苦しみを与えたくなかったし、何より僕自身苦しい記憶でもあったから。
そんな僕の痛みを感じ、包み込んでくれる千鶴。
彼女の前でだけ、僕は素直に弱いところを見せられる。
そのことが嬉しくて、胸の中にあるぬくもりを抱き寄せた。

「喜びも悲しみも分かち合おうって、二人で支え合って生きようって、そのために私はここにいるんです。 だから総司さんの過去を知りたいと思うし、今を共にしたいと思うんです……」

震えそうになる声をおさえて、一生懸命にそう告げてくれた千鶴。
近藤さんを亡くして、それでも生きてきたのは彼女と共にあるため。
たとえこの身がなくなってもずっと傍に、永遠に彼女を愛し続けるためにあるのだ――。

死んだらそこで終わりだと思っていた。
だけど、そうじゃない。
共に歩み、喜びも痛みも分かち合い、生きた千鶴がいるから。
抱きしめる腕がなくなっても。
口づける唇がなくなっても。
肌のぬくもりが消え失せても。
僕はずっと千鶴の傍にいる。
永遠に千鶴を愛し続ける。
だから、僕は千鶴に結婚を申し込んだ。
思いがけない申し出だったのか、千鶴はとても驚いていた。
それでもきちんと形にしたくて、誓いを言葉で彼女に伝えた。

「愛してるよ、千鶴」

口づけを落として、抱き寄せて。
今日も君に愛を囁く。
永遠に続くこの想いを。
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