さらさらと髪を撫でて

ダリ梓4

さらりと指の隙間からこぼれ落ちる金糸に目を奪われていると、「梓?」と名を呼ばれ、意識を髪から顔に移した。

「なに? ダリウス」

「俺の髪はそんなに君の心を掴むのかな?」

「ごめん。すごく綺麗で柔らかいからつい……」

「いいよ。責めたわけじゃないんだ。でも、俺の髪なんかより君の髪の方がずっと柔らかくて綺麗だと思うけどね」

「そんなことないよ」

祖父に似て癖があり、梳くのも大変で梓自身は好きではなかった。

「そう? ほら、こんなに柔らかくていいにおいだ」
「シャンプーはダリウスと一緒だよ?」

髪をいじる姿まで美しく、頬を赤らめ目をそらすと指が頬に移り、撫でて梓の意識を戻す。

「同じ香りを身に纏う……ふふ、甘美な響きだね」

「ダリウス……恥ずかしいよ」

「恥ずかしがる必要はないだろう? 俺たちは夫婦なんだ」

「そう、だけど……」

どこか性的なニュアンスを感じるのは、大人の階段を一歩梓がのぼったからなのだろうか?
冷めるどころかどんどん火照っていっているだろう頬の赤みを感じていると、さらりと髪を一房すくわれて、身を起こしたダリウスが恭しく口づける。

「…………っ!」
「ほら、こんなに甘くて俺を惹きつける……君だけの香りだ」

ダリウスの口元からさらさらとこぼれ落ちる赤い髪。
それが何故だかとても艶めかしくて目を離せずにいると、青い瞳がますます近づいて。

「――――」
一瞬の触れ合い。けれども確かに彼のぬくもりを感じて、どくんと大きく鼓動が跳ねた。

「……いとけない君も愛しいけど、俺のために花開いた姿はかぐわしくて……触れずにはいられない」

梓の目に宿った情欲を悟ったダリウスの瞳にもまた同じいろが浮かんで……さらりと、頬を金糸が撫でる。
甘い甘いキスは梓の息が上がるまで続いて、共にベッドに身を沈めたのは間もなくのことだった。
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