Happy Valentine

忍千5

「はい、忍人さん」
花柄のピンク色の和紙に包まれた箱を手渡され、忍人は眉をひそめて千尋を見た。

「これはなんだ?」
「バレンタインって言って、私のいた世界では今日大好きな人に贈り物をする日なんです」
「そ、そうか」
“大好きな人に”のくだりに、忍人は千尋から顔をそらして手元の箱に視線を落とす。

「本当はチョコというお菓子を上げるものなんですけど、忍人さん甘いものが苦手だって言っていたでしょ?」

「あ、ああ」

「だから、カリガネに教えてもらった甘さ控えめの特製餡が入ったお饅頭にしてみました」

にこにこ嬉しそうに微笑む千尋に、忍人は瞳を丸くした。

「……君が作ったのか!?」
「はい!」
千尋の返答に忍人が頭を抱える。
料理をする王などいようはずもないというのに、千尋は女王となった今でも無邪気なままだった。

「……わかった。頂こう」

しかしせっかくの好意を無にするわけにもいかないので、小言を飲み込み忍人は包装を解いていく。
箱に収められた可愛らしいハートの形のお饅頭を一つつまんで口に放った。

「どうですか?」
「……美味しい。甘すぎないので俺でも食べれそうだ。ありがとう」

忍人が微笑んでくれたのを見て、千尋が嬉しそうに笑う。
その笑顔に、忍人も幸せになる。
規格はずれな王ではあるけれど、それでもこうして千尋が笑顔でいてくれるのが、忍人にとっての幸福だった。
Index Menu ←Back Next→