甘美なる変化

風千21

「……ねえ、風早?」
「はい?」
ベッドの上で共に寝そべっていた風早は、千尋の呼びかけに身を起こした。

「なんですか、千尋?」
「その……えっと……」
視線を合わすと、言いにくそうに口ごもる千尋に、風早は軽く首を傾げて微笑んだ。

「千尋?」
「えっと……前に風早、こういうことするの私が初めてって言ってたよね?」
「ええ、そうですよ」
言葉を濁した問いを、しかし正確に読み取った風早は頷き答える。

「何かを欲するという感情は初めてだったので、俺も驚きました」
「驚いたの?」
「ええ」
風早の言葉に、千尋が不思議そうに瞳を瞬く。

「俺が白麒麟であったことは千尋も知っているでしょう? 神獣は『欲する』ということがないんです。だから、千尋を愛しいと想う感情も、欲しいと欲する気持ちも初めて知ったものだったんです」

愛しい恋人は、かつて白き龍の眷属である神獣・白麒麟であった。
確かに神に好き嫌いの感情や、まして何かを欲しがるという想いはないのかもしれない。

「だから正直、自分がこういうことが出来るとは思わなかったですね」
そっと唇を重ねた風早に、千尋が頬を赤く染める。

「知識としては知っていたんですが、愛しいと想う気持ちが引き起こす身体の変化には、正直驚きました」
「身体の変化?」
首を傾げる千尋に、風早はくすりと微笑むと、その手を下腹部に促す。

「…………っ!!」
「こういうことです」
一気に全身真っ赤に染まった千尋に、風早がくすくすと笑って覆いかぶさる。

「――だからちゃんと責任とって下さいね?」

動揺した千尋の反論を口づけで封じる。
絹のように滑らかな肌に手を滑らせると、風早は千尋によってもたらされた変化に身を委ねた。
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