根宮に響く明るい笑い声に、リブは瞳を細めた。
自然と口元が綻んでいく。
「皇、皇妃」
「リブ」
お茶を支度するリブに、寄り添い外を眺めて語らっていた千尋とアシュヴィンが、部屋の中へと戻ってくる。
「どうぞ」
「ありがとう。リブ、何か嬉しいことでもあったの?」
「や、お二人の姿があまりにも微笑ましかったもので」
リブの言葉に、千尋はアシュヴィンを見上げ頬を染める。
「恥ずかしがることはないだろう?」
「そ、そうなんだけど……」
照れて視線をそらす千尋に、アシュヴィンが自分の下に引き寄せる。
「アシュヴィンっ」
「昨夜あれだけ求めてくれたというのに、我が后は本当に初々しいな」
「…………っ!!」
耳元で囁くと、千尋が全身真っ赤に染まる。
その様子にクックと楽しげに肩を揺らせるアシュヴィンに、リブが苦笑を漏らす。
「お二人が仲睦まじいのは喜ばしいことですからね」
「リブまで……もうっ!」
アシュヴィンに同意を示すリブに、千尋が頬を染めて睨む。
本来の宮の光景が戻ったことに、リブは心から喜んでいた。
1ヶ月前に一度は消えた、皇と皇妃が寄り添う姿。
永遠の忠誠を誓った主と、彼の隣に立つにふさわしい器量を持つ千尋。
その二人の幸福な姿は、国の明るい未来を指し示していた。
「兄様! 義姉様!」
「シャニ」
入り口で手を振りながら駆けてくる少年を、三人が微笑んで迎える。
緑が甦り、笑顔が溢れ、笑い声が響く。
一度失い、必死に取り戻し、そして再び失いかけたかけがえのないそれら。
「千尋」
いつも心に留め、考えると約束した愛しき者の名を呼ぶと、千尋が花開く笑顔で振り返った。
「アシュヴィン。愛してるわ」
「……! ああ、俺も愛してる」
思いがけない告白に一瞬驚くと、アシュヴィンは笑顔を浮かべ、愛しい存在をその腕に抱きしめた。
「もう一度、あの日の約束をお前に誓おう。
俺はいつもお前のことを想い、考える。――愛するお前のことを」