あの日の約束を今ここで-12-

アシュ千17

根宮に響く明るい笑い声に、リブは瞳を細めた。
自然と口元が綻んでいく。

「皇、皇妃」
「リブ」
お茶を支度するリブに、寄り添い外を眺めて語らっていた千尋とアシュヴィンが、部屋の中へと戻ってくる。

「どうぞ」

「ありがとう。リブ、何か嬉しいことでもあったの?」

「や、お二人の姿があまりにも微笑ましかったもので」

リブの言葉に、千尋はアシュヴィンを見上げ頬を染める。

「恥ずかしがることはないだろう?」
「そ、そうなんだけど……」
照れて視線をそらす千尋に、アシュヴィンが自分の下に引き寄せる。

「アシュヴィンっ」
「昨夜あれだけ求めてくれたというのに、我が后は本当に初々しいな」
「…………っ!!」
耳元で囁くと、千尋が全身真っ赤に染まる。
その様子にクックと楽しげに肩を揺らせるアシュヴィンに、リブが苦笑を漏らす。

「お二人が仲睦まじいのは喜ばしいことですからね」
「リブまで……もうっ!」
アシュヴィンに同意を示すリブに、千尋が頬を染めて睨む。

本来の宮の光景が戻ったことに、リブは心から喜んでいた。
1ヶ月前に一度は消えた、皇と皇妃が寄り添う姿。
永遠の忠誠を誓った主と、彼の隣に立つにふさわしい器量を持つ千尋。
その二人の幸福な姿は、国の明るい未来を指し示していた。

「兄様! 義姉様!」
「シャニ」
入り口で手を振りながら駆けてくる少年を、三人が微笑んで迎える。

緑が甦り、笑顔が溢れ、笑い声が響く。
一度失い、必死に取り戻し、そして再び失いかけたかけがえのないそれら。

「千尋」
いつも心に留め、考えると約束した愛しき者の名を呼ぶと、千尋が花開く笑顔で振り返った。

「アシュヴィン。愛してるわ」
「……! ああ、俺も愛してる」
思いがけない告白に一瞬驚くと、アシュヴィンは笑顔を浮かべ、愛しい存在をその腕に抱きしめた。

「もう一度、あの日の約束をお前に誓おう。
俺はいつもお前のことを想い、考える。――愛するお前のことを」
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