「……あれ?」
ふとつないだ手の感触に違和感を感じると、なんだよと不思議そうに振り返る将臣に手を目の高さまで掲げて。
「将臣くんの方が手、大きい?」
「そりゃそうだろ。背だって伸びたしな」
確かに中学に入ってからグッと将臣の背が伸びて、以前はそれほど変わらなかった身長も今では見上げる状態になっていた。
「ちょっと手広げて!」
「こうか?」
「……やっぱり将臣くんの方が大きいね」
重ね合わせた手のひらは一回り将臣の方が大きくて、感じた差に胸がもやりとして顔を歪ませる。
「なんだよ。変な顔になってるぞ?」
「女の子に変な顔は失礼だよ」
「へいへい。で、どうした?」
「別に……ただ変わっていってるんだって思っただけ」
「なんだそりゃ」
望美の返答の意がわからないと呆れる将臣に、けれども望美自身この胸のもやもやの正体がつかめないため、曖昧にしか答えられなかった。
幼い頃はどこに行くのも一緒で、譲と一緒に同じように動き回っていた。
なのに少しずつ何かが変わってきて、一緒にいる時間も減ってきて、けれどもその違和感に異を唱えるのは望美ばかりで、将臣たちはそれぞれ部活があるからだとか軽く流していた。
「……置いてかないで」
ぽろりとこぼれた呟きは、望美の内から出た願い。
ずっと一緒にいたいと、いるものだと思っていたのに崩れていく現実が寂しくて俯くと、ぎゅっと掌を包まれて。
「バァカ」とぐしゃりと頭を撫でられる。
「お前、いい加減幼馴染離れしねえと困るぞ?」
「いいもん。困らないもん」
何に困るのかわからなくて頬を膨らませると、将臣が見たことのない表情を浮かべていて「将臣くん?」と問うと、何でもないと手を繋がれる。
その手が今までとは違う恋人繋ぎであることに望美は気づかず、そんな彼女に将臣もまた戸惑っていた。
10周年企画