好き、って言って

将望35

「――なあ、望美。俺のこと、好きか?」
押し倒され、見下ろす形での問いかけに望美は顔を赤らめて眉を下げる。

「こんなに好きになると思わなかったよ」

物心ついた頃から傍にいるのが当たり前で、小学生の頃まではいつだって一緒にいた。
男とか女とかそんなことを考えたことはなく、ただ傍にいるのが当たり前の存在だった。
それがいつしか距離が出来て、幼馴染離れしろだなんて揶揄われて、どうして今までと同じではいけないのか、一人取り残されているようで寂しかった。
けれども時空の狭間で手が離れて、一人時を隔ててしまった将臣と再会した時、その変化が否応なく自分と将臣の時間が重ならないことを知らしめて、初めて望美はずっと同じでいることなんてできないことを知った。

変わらないものなんてない。
望美も将臣も背が伸び、男女の体格差も誰の目から見ても明らか。
望美の知らない交友関係が生まれ、望美の知らない将臣の一面が増えていくことが寂しくて仕方ない。
それがどうしてかを考えた時、幼馴染だけではない思いがあることに気がついた。

将臣が大事なことは変わらない。
けれども、ただ傍にいられればいいんじゃない。
彼の一番でいたい。
彼の――誰よりも大切な女の子で在りたい。
だから将臣がこうして望美の元に戻ってきてくれたことが嬉しくて、腕を伸ばすとその背に絡めてキスを求める。

変わらないものはない。
あの世界で時を隔てた将臣の身体は、時間を戻され以前の姿に戻ったけれど、その心に刻まれた思いはなかったものには出来ないし、それは望美も同じだった。
それでも変わらなかったのは、互いを大切に思う気持ち。
けれどもそれさえも以前と同じではなく、愛しいと、異性を思う気持ちが加わった。

「念のために聞くが近所の将臣くんのままじゃねえよな?」

こうして執拗に確認するのは以前の望美が幼く、彼を散々惑わせていたからだろう。
だから望美は違うよと否定すると、もう一度その身を引き寄せてキスをする。

「将臣くんと同じ気持ちで好きなんだよ」

わずかに唇が離れた瞬間そう告げれば一瞬で距離を埋められて、後はただただ深く熱く求められた。

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