遠くを想いて

将望37

いつもはうるさいぐらい元気な望美が顔を曇らせている様子に、将臣がドライブに誘う。
一度家に帰り、私服に着替えた二人は、将臣のバイクで海へ。
浜辺に下りると、いつもははしゃぐ望美だが、今日は何かを思うように水平線をじっと見つめていた。

「ずっと何を考えてんだ?」
「ん……みんな、どうしてるのかな~って」

望美の言葉に、将臣も瞳を細める。
異世界からやってきた荼吉尼天を倒すために、時空を超えて助けに来てくれた仲間たちが、つい先日彼らの世界へと帰って行ったのである。
京での滞在期間も含めると1年以上も共にいたので、やはり寂しいのだろう。
海風に髪をなびかせていた望美の肩が震えたので、将臣はそっと抱き寄せ温もりを分け与える。

「温かい」
くすっと微笑む様が寂しげで、抱きしめた腕に力を込める。

「将臣くん?」
「……寂しいか?」
問われて、こくんと頷く。

「ずっと一緒だったから、もう家族みたいな感じで……」
苦しい異世界で望美たちを支えてくれて、こちらの世界をも守ってくれた仲間達。
時空を超えたあの世界はあまりにも遠すぎて、また会いたいと望んでも叶うことはない。

「俺があいつらの分までお前の傍にいるから。
だから泣くなよ……」

言われて、自分が涙を流していることに気づく。
少し骨ばった指が涙を拭う。
包み込む将臣の腕が、伝わる温もりが暖かくて、望美は瞳を閉じると胸にすりより頷いた。

「うん……将臣くんはずっと私の傍にいてね。
もう、離れ離れは嫌だよ……」
「ああ……」
いつもとは違う儚げな望美に、将臣は存在を伝えるように強く抱きしめた。
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