「望美ちゃん、危ない!」
「え?」
景時の呼びかけに、振り返った望美の前が紅に染まる。
目の前の敵に夢中になって油断した望美を庇い、景時が怨霊の鋭い爪で切り裂かれたのである。
「景時さん!」
「望美! 前見ろ! 封印だ!!」
「……っ、うん」
倒れた景時が気になるが、封印できるのは望美だけ。
望美はぐっとこらえ、将臣が弱らせた怨霊を封印する。
くぐもった絶叫が響き渡ると、辺りが静寂に包まれる。
空気が清浄に戻ったのを確認すると、望美は景時の元へと走り寄った。
「大丈夫ですか!? 景時さん!」
「ははっ……大丈夫。ちょっと失敗しちゃったね~」
弁慶に応急処置を受けながら笑う景時に、望美は唇をぎゅっと噛むと景時の頬を打った。
「の、望美ちゃん?」
「助けてくれたのには感謝するけど、でもそんな簡単に自分の命を投げ出さないで!」
涙を浮かべる望美に、景時が言葉を失う。
「みんな、私が白龍の神子だから……封印する力があるから、優先して守ってくれるけど。
でも、みんなが私を大切にしてくれるように、私だってみんなのことが大切なんです! だから、だからそんな簡単に私のために命を投げ出さないで!!」
「先輩……」
「……望美、そこまでにしろ。傷の手当てが先だ」
泣きじゃくる望美の肩を、将臣がそっと抱き寄せる。
「……っ」
「ごめん……望美ちゃん」
「あやまらない、でっ……景時さんは、私を守って……っ」
「……うん。今度はこんな守り方はしないから。ちゃんと自分のことも守るよ」
「……っ約束ですよ」
「うん」
申し訳なさそうに謝る景時を、望美は涙を浮かべながら見つめた。