Happy Valentine

九望21

「はい、九郎さん!」
可愛い花柄のピンクの包装紙でラッピングされた箱を手渡され、九郎は不思議そうに手の中の箱を見た。

「これはなんだ?」
「今日はバレンタインと言って、大好きな人にチョコをあげる日なんです」
「そ、そうか」

望美の説明に、九郎が顔を赤らめる。
誤魔化すように包装紙を破くと、中から出てきたのは数点の菓子。

「これが“チョコ”か?」
「これがアーモンド入りで、こっちがプレーン。で、これはチョコブラウニーというケーキです」

ぽんぽんと飛び出す意味不明な単語に、九郎はとりあえず食べてみることにした。

「うまいな。少し甘いが、なかなかの美味だ」
「本当ですか!? 嬉しい!」
九郎が喜んでくれたことに、望美が大喜びする。

「そんなに嬉しいのか?」

「それはそうですよ。頑張って作って喜んでもらえたら、すっごく嬉しいんです」

「作ってって……これは望美が作ったものなのか!?」

「そうですよ」

驚き、改めて箱の中のチョコを見る。
菓子など自分で買うことのない九郎だが、時々望美が持ってきたものをつまむこともあり、贈られたチョコはそれらと大差ないぐらいに上手に出来ていた。

「前に貰ったクッキーもそうだが……望美は料理が上手なのだな」

「違いますよ。料理は全然ですけど、お菓子なら少し作れるんです」

「そうか」

料理と菓子の作り方の違いはよく分からないが、素直に頷き再度菓子を口にする。

「これから料理もいっぱい練習して、いつか九郎さんに毎日食べてもらえるように頑張りますね!」
毎日食べてもらう……つまりそれは。望美の言葉に、九郎は顔を真っ赤に染めた。

「だから、いつかお嫁さんにしてくださいね!」

にっこり微笑まれて、九郎は耳まで真っ赤に染めて顔をそらすと、「わ、わかった」とぎこちなく頷いた。
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