色とりどりのリボンを飾って。
こっそり頼んでおいた星の飾りを頂上に。
「できたー!」
二人の部屋から見えるところにあるのはクリスマスツリー。
ヒノエを驚かせようと、密かに用意していた望美は満足げにツリーを見つめた。
「あとは贈り物だよね」
この日のためにとちょっと頑張って用意した料理の数々。
ケーキは無理なので、鶏の丸焼きやジャガイモのソテーなど、作れるだけクリスマス料理を作ってみた。
「ヒノエくん、驚くよね」
普段驚かされることはあってもヒノエが驚くことはないから、望美はワクワクと帰りを待つ。
「…………あ!」
近づく気配を感じて入口へと駆け寄り、口を開きかけた途端。
「メリークリスマス」
思いがけない言葉に、望美は瞳を丸くした。
「ふふ、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているね」
「ヒノエくん、クリスマスのこと知ってたの?」
「ああ、もちろん。……というのは冗談。
将臣に聞いたのさ。暮れにお前たちの世界で何か行事があるのかい? ってね」
「……もしかしてこっそり準備してたの、バレバレだった?」
自分では秘密裏に動いていたつもりだったが、どうやらヒノエには筒抜けだったらしい。
顔を赤らめると、ヒノエがひょいっと望美を抱き上げた。
「今日の姫君はサンタクロースかい?」
望美が纏っているのは、秋にヒノエが贈った韓紅の衣。
「そんなことまで知ってるんだね」
「可愛らしいサンタクロース殿、この豪華な食事を頂いてもいいかい?」
「うん。お口に合うといいんだけど……」
「お前手ずから作ってくれたものが合わないわけないさ。うん、美味しい。
特にこの香味料がいいね」
「あ、それは弁慶さんにもらったの。味に深みが増すって」
「……弁慶から?」
ぴたりと止まった手元に、望美は不思議そうにヒノエを見る。
「ヒノエくん?」
「……これを渡す時にあいつは何か言ってなかった?」
「そういえば……ヒノエくんの食べる分にだけ、って言ってたかな」
「あの野郎……」
「ヒノエくんっ!?」
ふらりと傾いだ身体。
慌てて駆け寄ると、すやすやと眠っているヒノエ。
「疲れてたのかな?」
突然眠りこけたヒノエに、まさか自分が弁慶の策にはまって睡眠薬を盛ったとは知らず微笑むと、掛け布をかけて隣りに横になる。
「おやすみなさい、旦那様」
愛しい奥方の口づけを受け、ヒノエは昏々と朝まで眠りこけるのだった。