「はい、弁慶さん」
可愛い花柄のピンクの包装紙でラッピングされた箱を受け取り、弁慶がにっこりと微笑む。
「ありがとうございます。望美さんが作ってくださったんですか?」
「はい! また譲くんに教えてもらっちゃいました」
料理が苦手な望美は、事あるごとに料理上手な譲を頼っていた。
「それは……譲くんには悪いことをしましたね」
「え?」
「いえ、こちらのことです」
譲の望美への想いを知っている弁慶は、自分へのチョコを作るのを手伝わされた彼へ憐憫の情が
わく。
しかし、だからといって彼女のチョコを譲るわけにはいかない。
「それでは美味しいチョコを頂いたお礼に紅茶を入れましょう」
「わぁい!」
有川家に居候している間に望美の好みを把握した弁慶は、自室にしっかりと望美の好きなお茶を
用意していた。
望美用にと買った白磁に花が描かれたティーカップに紅茶を注ぎ、おそろいのカップに自分の紅茶も注ぎいれて持っていく。
「あ! これ、この前とはまた違った紅茶ですね?でもこれもいい香り~!」
花の香りを好む望美は、新しい紅茶に大喜び
する。
「それでは、早速望美さんから頂いた贈り物をあけましょう」
わくわくと瞳を輝かせる望美に、弁慶が微笑んでリボンを解く。
箱から出てきたのは、小さなチョコケーキ。
「これはケーキですか?」
「はい! チョコブラウニーって言うんですよ。少しだけ洋酒が入っているので、弁慶さん向きかなぁと思って」
「ありがとうございます。でも僕は望美さんが
作ってくださるのならば、何でも嬉しいですよ」
弁慶の言葉に、望美が顔を赤らめ照れる。
そんな可愛らしい望美にくすりと笑みを浮かべると、一つつまんで口に放る。
「美味しいです。これからも僕に望美さんが作ったものを食べさせてくれますか?」
「はい! 来年も頑張りますね!」
遠巻きのプロポーズに、しかし望美は気づいていないようで、弁慶が苦笑を漏らす。
「え? なんですか?」
「いいえ。楽しみにしていますね」