僕を導く光

弁望80

「良かった」
「望美さん?」
「前に弁慶さん、平穏に自分が浮いてないかって、そう言っていたことがあったでしょ?
でも今の弁慶さん、全く違和感ないですよ」

それは熊野での出来事。
怨霊によって熊野川が氾濫して足止めをされていた時、ひょんなことから宿の子供とかくれんぼをすることになり、偶然同じ場所に隠れた望美に弁慶が告げた言葉だった。
嬉しそうに微笑む望美に、弁慶はふっと表情を
和らげた。

「それは望美さんのおかげですよ」
「私?」
「君のおかげで僕はこの平穏な世界の中で生きていけるんです。以前の僕ならばありえなかった
生き方を、君が与えてくれたから」

贖罪に全てを捧げていた過去。
そんな時に望美と出会い、この世界へとやってきたことから得た平穏。
その中で生きていけるのは、愛する望美が共にいてくれるからだった。

「ありがとうございます、望美さん」
「私、そんなお礼を言われるようなことなんて
何もしてませんよ」
「いいえ。君が僕を救ってくれたんです」

戸惑う望美に、にこりと微笑む。
光の道を示してくれた清き神子姫。
ずっと自分には開かれることなどないだろうと
思っていたその道を、望美は手を引き共にと歩いてくれる。
自分がここにいることに戸惑う時もあるけれど。
君とこうして手を繋いでいれば、不安は掻き消えていくから。
「愛してます、望美さん」
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