策士健在

弁望63

「う~ん……」
眉を寄せて何事か思い悩んでいる望美に、弁慶はそっと後ろから抱きよせる。

「何を思い悩んでいるのですか?」
「あ、弁慶さん。えっと……」
言いにくそうに口ごもるが、意を決するとゆっくりと言葉をつむぐ。

「その……弁慶さんとこれだけ毎晩……してるのに、よく赤ちゃん出来ないな~って思って」

頬を赤らめながら疑問を口にする望美に、弁慶がくすっと笑みを漏らす。

「ああ、そのことですか」
「だって、コンドームとかあるわけじゃないし、普通だったら出来ててもおかしくないはずなのに」
弁慶の知らない単語を口にする望美に、しかし
弁慶はあえて追及しない。

「望美さんは子供が欲しいですか?」

「え? う~ん……出来た時はちゃんと大切に育てたいと思うけど。でも今はまだ、弁慶さんと二人でこうしていられる方がいいかな」

素直な答えに、弁慶は笑みを浮かべて口づける。

「僕もですよ。君との子供ならばとても可愛らしいでしょうが、まだまだ君を独占したいですからね」

そう、子供を授からないのは偶然ではなかった。
薬師である弁慶は、女性の子供を授かりやすい
周期というものも知っていて、きちんとその日を避けていたのである。
ただ、現代のように避妊具があるわけではないので、100%妊娠しないわけではないが。

「僕の想いを龍神が聞き入れてくれてるのですかね?」
弁慶の呟きに首を傾げる望美に、苦笑を洩らして口づける。

(愛し過ぎて、自分の子供にさえ嫉妬しそうだなんて言ったら、君はどうするでしょうね?)

胸の内で問いながら、弁慶はそっと望美の身を
横たえた。
弁慶の与える快感に反応する様に、そっと微笑むと望美に覆いかぶさった。
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