最強神子様の思わぬ弱点

弁望33

蔀戸を開けようとした望美は、ぽとんと手に落ちてきた感触に絶叫した。

「どうしたんですか!?」
「手……っ! 蔀戸…っ! ぽとんって……っ!!」
驚き飛び出してきた弁慶に、望美が涙目で抱きつく。
パニックを起こしている望美の言葉は断片的で、弁慶はとりあえず落ち着かせようとそっと頭を
撫でた。

「落ち着いて。どうしたんですか?」
「蔀戸! 蔀戸に……っ!!」
「蔀戸?」
望美が指差す蔀戸を見た弁慶は、ああと納得する。
蔀戸の下にいたもの――それはトカゲ。

「望美さん、ただのトカゲです」
「トカ……きゃ~! 私の手の上に乗ったんですよっ!? イヤ~~ッ!!!」
存在を認識するや、急いで手を洗いに家の中へと消えた望美に、弁慶がくすくすと笑う。
怨霊を相手に勇ましく戦っていたというのに、
トカゲ1匹にあれほどの悲鳴をあげた望美。

「君は本当に可愛い人ですね」
今頃トカゲの感触を思い出して涙目になっているであろう、可愛い妻を思い浮かべて、弁慶は
微笑みながら家の中へと戻っていった。
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