百の真実の中の

弁望8

「……平気、ですよ」
そう笑って見せて。
望美に八咫鏡をかざさせた。

「平気だって言ったじゃないですか!」
僕の嘘を信じた君の瞳に浮かぶ涙。
最期まで僕は君を悲しませた。
この胸の痛みは、その罪の証なのだろう。

「せっかく怨霊も消して……終わらせることができたのに……」

「いいんですよ……これが僕の望み……いえ……罪であり……罰だったん……です……」

――そう。 これは僕が犯した罪への罰。
応龍を滅したあの日から、この手で決着をつけねばならなかったから。
それでも悔やむのは、最期を君の手に委ねてしまったこと。
君が傷つくだろうと、そうわかっていながら選んでしまった。

君に見せた数多の僕。
百の真実の中の真実は――。

「泣かないで……」
最期に見るのは笑顔がいい。
浅ましくもそう願ってしまうのは。
この胸に抱いた、君への――。
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