「大丈夫です!」
「いや、これは私が」
「そうやっていつも敦盛さんばかり重いじゃないですかっ」
二人が言い争っているのは、今日買ってきた荷物。
「私は男なのだから、重いものを持つのは当然だ」
「これぐらい重くありません」
店員から受け取った横から掻っ攫う敦盛に、望美が頬を膨らませる。
敦盛の手には、荷物が二つ。
そのいずれもそれなりの重さがあり、二人で分け合おうとしたのだが、敦盛は頑として譲らなかった。
「必要だったものはこれで全部だろうか?」
「えっと……はい、大丈夫です」
買い物リストを思い浮かべて頷くと、そうかとさっさと歩いていってしまう。
その姿を追いかけながら、上手くはぐらかされたことに望美は唇を尖らせた。
女の子だと気遣ってくれるのは嬉しい。
けれども――。
「……望美!?」
「私は『一緒』がいいんです!」
ぐいっと買い物袋を引っ張って、驚く敦盛に言い放つ。
気遣ってくれる敦盛の優しさは嬉しい。
けれど、望美は敦盛と一緒でいたいのだ。
そう告げると、伏せられた睫毛の下で、紫紺の瞳が困ったように揺れた。
「だが……」
「だがもかかしもないです」
「しかし女人に重いものを持たせるなど……」
「私はそこいらの女の子よりよっぽど力がありますから、その心配は不要です」
ことごとく言葉を遮られた敦盛はきゅっと唇を結ぶと、まっすぐに望美を見返した。
「男が女人を守るのは当然の務め。それにあなたは……私の大切な人だ」
「え?」
「あなたが女人だからではなく、あなただから私が持ちたいんだ」
「敦盛さ……」
ビリッ!
「「え?」」
ドサドサドサッ!
ハモった声に重なる音。
落ちる品物。
に、慌ててしゃがみ拾い歩く。
「ぷっ……」
「クッ……」
「あははははははっ!」
顔を見合わせ、二人揃って笑ってしまう。
「ごめんなさい。ちょっと意固地になりすぎました」
「いや……私も同じだ」
互いを思う気持ちが生んだ小さなすれ違い。は、しかし二人の絆をより深める。
拾った荷物を他の袋に移して、袋の持ち手を一つずつ。
「さ、帰りましょう。早くしないと譲くんのご飯食べ損ねちゃいます」
「そうだな。私達のせいで夕餉が遅れてしまったら、将臣殿や譲殿、ご両親に申し訳がたたない」
頷きあうと、並んで帰路を歩いてく。
二人で持った荷物が揺れる。
そんなささやかなことが嬉しくて、胸が温まる、そんな一時――。