手を取り合って、歩いてく

敦望18

「大丈夫です!」
「いや、これは私が」
「そうやっていつも敦盛さんばかり重いじゃないですかっ」
二人が言い争っているのは、今日買ってきた荷物。

「私は男なのだから、重いものを持つのは当然だ」
「これぐらい重くありません」

店員から受け取った横から掻っ攫う敦盛に、望美が頬を膨らませる。
敦盛の手には、荷物が二つ。
そのいずれもそれなりの重さがあり、二人で分け合おうとしたのだが、敦盛は頑として譲らなかった。

「必要だったものはこれで全部だろうか?」
「えっと……はい、大丈夫です」

買い物リストを思い浮かべて頷くと、そうかとさっさと歩いていってしまう。
その姿を追いかけながら、上手くはぐらかされたことに望美は唇を尖らせた。
女の子だと気遣ってくれるのは嬉しい。
けれども――。

「……望美!?」
「私は『一緒』がいいんです!」

ぐいっと買い物袋を引っ張って、驚く敦盛に言い放つ。
気遣ってくれる敦盛の優しさは嬉しい。
けれど、望美は敦盛と一緒でいたいのだ。
そう告げると、伏せられた睫毛の下で、紫紺の瞳が困ったように揺れた。

「だが……」

「だがもかかしもないです」

「しかし女人に重いものを持たせるなど……」

「私はそこいらの女の子よりよっぽど力がありますから、その心配は不要です」

ことごとく言葉を遮られた敦盛はきゅっと唇を結ぶと、まっすぐに望美を見返した。


「男が女人を守るのは当然の務め。それにあなたは……私の大切な人だ」

「え?」

「あなたが女人だからではなく、あなただから私が持ちたいんだ」

「敦盛さ……」

ビリッ!

「「え?」」

ドサドサドサッ!

ハモった声に重なる音。
落ちる品物。
に、慌ててしゃがみ拾い歩く。

「ぷっ……」
「クッ……」
「あははははははっ!」
顔を見合わせ、二人揃って笑ってしまう。

「ごめんなさい。ちょっと意固地になりすぎました」
「いや……私も同じだ」

互いを思う気持ちが生んだ小さなすれ違い。は、しかし二人の絆をより深める。
拾った荷物を他の袋に移して、袋の持ち手を一つずつ。

「さ、帰りましょう。早くしないと譲くんのご飯食べ損ねちゃいます」

「そうだな。私達のせいで夕餉が遅れてしまったら、将臣殿や譲殿、ご両親に申し訳がたたない」

頷きあうと、並んで帰路を歩いてく。
二人で持った荷物が揺れる。
そんなささやかなことが嬉しくて、胸が温まる、そんな一時――。
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