学問のすすめ

敦望16

「学校に?」
望美と敦盛の話に、将臣たちは顔を見合わせるとうーんと考え込む。
茶吉尼天を倒し、敦盛がこの世界に残って三ヶ月余り。
戸籍などは白龍が用意してくれたが、細かな職までは世話できなかったようで、敦盛はいまだ有川家に居候状態だった。

「それだったら高認を受けたらどうでしょうか?」

「高認?」

「ああ、受かれば大学受験の資格を受けられるってやつだろ?」

「そんなのがあるんだ」

「難しいが敦盛ならできるんじゃないか?」

敦盛のまじめな性格を知っている譲の提案に、望美が嬉しそうに微笑む。

「よかったですね、敦盛さん」
「だったら敦盛も俺たちと同じ受験生だな」
「受験生?」
「俺たちも4月からは三年だからな。進路決めの時期なんだよ」
「先輩は大学進学ですよね?」
「うん、一応」
「おいおい、そんなんで大丈夫なのかよ」
「将臣君こそ大丈夫なの?」
「お前よりはな」
やいやいと賑やかな三人を見つめながら、敦盛はそっと呟く。

「高認……」
生前、無官の大夫だった敦盛は、官職につくことなく命を落とした。
けれどもこの世界に、望美の傍にあろうというのならば役割は必要、そう考えていたところに、望美の友人に会い、学問を学ぶ道を示された。

「敦盛さん?」

「望美、あとで高認の為の資料を探しに行くのを手伝ってもらえるだろうか?」

「もちろんです! 私も参考書選ぶので、一緒に行きましょう」

「ああ。助かる」

眩い笑顔に目を細め、その光に手を伸ばす。
確かに握り返される手。
自分にはこの手を受け止めてくれる存在があるのだから。

「受験勉強も敦盛さんと一緒ならきっとはかどりますね」
「ああ。私もあなたと共に学べることが嬉しい」

顔を見合わせ微笑みあう二人に、有川兄弟は肩をすくめるとリビングを後にした。
この後、一年遅れで大学に進学した敦盛。
これはその未来に続く、少し前のお話。
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