私を待つ灯火

敦望12

「敦盛さん……幸せなんてもらわなくていい。私が作るよ」
きっぱりと言い切る望美に、敦盛が目を瞠る。

「私はあなたと幸せになる」
「……神子……」
まっすぐな翡翠の瞳に微笑み返す。

「ああ……ありがとう」
敦盛の笑顔に、望美の瞳から涙がこぼれ落ちる。

「敦盛さん……傍にいてくれますか……?」
「ああ……あなたの傍にいよう」
敦盛の返事を聴いた瞬間、望美の身体が傾ぐ。

「神子!?」
「……気を張ってたのが緩んだんだろ。大丈夫だ」
敦盛の腕に抱かれて眠る望美を見て、将臣が穏やかに微笑む。

「こいつを頼んだぜ……敦盛」
「将臣殿……はい」
大切な想い人を託してくれた将臣に、敦盛はしっかりと頷いた。



「ん……」
「気がついたか?」
すぐ傍で聞こえた、少し低めの大切な人の声に、望美はハッと身を起こした。

「敦盛……さん?」
「ああ」
「帰らないで……ここに……私の傍に残ってくれたんですね……」
「ああ」
穏やかな微笑みに、望美の瞳から新たな涙が溢れ出る。

「み、神子……っ」
「ありがとう……敦盛さん」
「いや……礼を言うのは私の方だ」
涙を指ですくいながら、敦盛が望美を見る。

「私は……ずっとあなたが好きだった。
だが、人ならざるこの身で清浄なるあなたを恋うなど、許されぬことだと……ずっとそう思っていた」

「そんなこと……っ」

言い募ろうとする望美を笑顔で塞ぎ、言葉を紡ぐ。

「だが、あなたはそんな私を求めてくれた。
あなたが求めてくれたから、私はあなたの傍にいることが出来るんだ。ありがとう……神子」

敦盛の言葉に再び涙が溢れ出す。

「み、神子……っ」
「大丈夫です。これは嬉し涙だから……敦盛さん、本当にありがとう」

そっと敦盛の手を取り、望美が笑顔を浮かべる。
その眩さに、敦盛は目を細め微笑み返す。

「あなたと二人……微笑み、悲しみ、愛し……日々を重ねていきたい」
二人で『生きて』いく。
私はあなたと……幸せになる。
Index Menu ←Back Next→