「敦盛さん……幸せなんてもらわなくていい。私が作るよ」
きっぱりと言い切る望美に、敦盛が目を瞠る。
「私はあなたと幸せになる」
「……神子……」
まっすぐな翡翠の瞳に微笑み返す。
「ああ……ありがとう」
敦盛の笑顔に、望美の瞳から涙がこぼれ落ちる。
「敦盛さん……傍にいてくれますか……?」
「ああ……あなたの傍にいよう」
敦盛の返事を聴いた瞬間、望美の身体が傾ぐ。
「神子!?」
「……気を張ってたのが緩んだんだろ。大丈夫だ」
敦盛の腕に抱かれて眠る望美を見て、将臣が穏やかに微笑む。
「こいつを頼んだぜ……敦盛」
「将臣殿……はい」
大切な想い人を託してくれた将臣に、敦盛はしっかりと頷いた。
「ん……」
「気がついたか?」
すぐ傍で聞こえた、少し低めの大切な人の声に、望美はハッと身を起こした。
「敦盛……さん?」
「ああ」
「帰らないで……ここに……私の傍に残ってくれたんですね……」
「ああ」
穏やかな微笑みに、望美の瞳から新たな涙が溢れ出る。
「み、神子……っ」
「ありがとう……敦盛さん」
「いや……礼を言うのは私の方だ」
涙を指ですくいながら、敦盛が望美を見る。
「私は……ずっとあなたが好きだった。
だが、人ならざるこの身で清浄なるあなたを恋うなど、許されぬことだと……ずっとそう思っていた」
「そんなこと……っ」
言い募ろうとする望美を笑顔で塞ぎ、言葉を紡ぐ。
「だが、あなたはそんな私を求めてくれた。
あなたが求めてくれたから、私はあなたの傍にいることが出来るんだ。ありがとう……神子」
敦盛の言葉に再び涙が溢れ出す。
「み、神子……っ」
「大丈夫です。これは嬉し涙だから……敦盛さん、本当にありがとう」
そっと敦盛の手を取り、望美が笑顔を浮かべる。
その眩さに、敦盛は目を細め微笑み返す。
「あなたと二人……微笑み、悲しみ、愛し……日々を重ねていきたい」
二人で『生きて』いく。
私はあなたと……幸せになる。