平家の神子

49、和議

後白河院から源氏・平家両家にもたらされた和議の院宣。
それを実現するために、望美は福原で源氏の使者を待っていた。
以前と同じならば、ここにやってくるのは頼朝の奥方である北条政子。

「あら? ずいぶんと閑散としていますのね」

九郎を伴いやってきた政子は、望美と将臣しかいない場を見て驚きを表情に浮かべた。

「私のお相手はあなたがただけなのですか? せっかく平家と和議を結びに参りましたのに」
「政子さん、その言葉は本当ですか?」
「ふふ……くすくす……まあ、怖いこと。可愛いお嬢さんにそんな風に睨まれてしまうなんて。私、どうしたらよいのでしょうね」

くすくすと微笑むと、政子は妖艶な笑みを浮かべ望美を見た。

「――ええ、本当は違いますわ。源氏を勝たせるために参りましたの」
「和議に見せかけてだまし討ち、ですか」
「正解ですわ。ふふ、よくご存知ですのね」
「政子様? それは本当ですか!?」

知らされていなかったのだろう、驚いている九郎に、望美はまっすぐ政子を見返した。

「和議は必ず成立させます」
「まあ……けれど、すでに事は動き始めていますのよ。どうするつもりですの?」
「頼朝に和議を改めて行うよう、進言してもらえませんか」
「うふふ……それは無理ですわ。頼朝殿のご意志は、平家と並び立つことを望まれておりませんもの」
「でしたら、その意思を変えさせます」
「まあ……可愛い顔して怖い子ですのね。けれど、あなたがただけでは私を止められませんわよ」

政子の身体から怪しげな気が立ち上がった瞬間、キリ……ッと弓を引く音が辺りに響く。

「先輩から離れて頂きましょうか、北条政子さん」
「神子は我らが」
「先生っ?」

望美を守るように前に進み出るリズヴァーンに、九郎は目を剥いた。

「なぜ、先生がここに?」
「八葉は神子のためにある。故に私がこの場にあるのも神子の為」
「鬼まで味方につけているなんて……ふふ、怖いお嬢さんね」

弓や剣を向けられても政子が怯える様子はなく、譲は訝しげに彼女を見た。

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