平家の神子

40、始動

清盛が死反の力で蘇ってから二ヶ月。
陰の気にあてられることを避け、望美は経正の邸に滞在していた。

「和議を結ぶなら、源氏側にもコネが必要だよね」
「まあ、そうだな。どちらも素直に和議を受け入れようとはしないだろうからな」

源氏の棟梁・頼朝と、平家の棟梁・清盛。
京での実権を狙う両者が歩み寄ることなど、到底叶わぬことだった。

「源氏は私に任せて」
「望美?」

神子として以前よりも力を得たとはいえ、これから怨霊が増していくであろう平家にずっと居続けられるのか? 万が一のことを考えると、平家を出るのはやはり望美の方が適任だった。

「将臣くんは平家に残って」
「お前一人で乗り込む気か?」

驚く将臣に、望美は前の時空での事を思い出す。
望美の身を案じ、共に平家を出た将臣。
しかしそのことで彼は信用を失い、平家で重き存在となりえなかった。

「和議を結ぶ時、源氏もだけど平家にもそれを一緒に推し進めてくれる存在が必要でしょ? 将臣くんには平家をまとめて欲しいの」
「だが……」
「私なら大丈夫」

渋る将臣に微笑んで。
時空を越えてすぐに再会したリズヴァーンのことを話す。

「そいつは本当に信用できるのか?」
「うん。先生は必ず力になってくれる」

まだ一度も会ったことのないリズヴァーンを将臣は信用できないようだったが、望美は確信していた。 リズヴァーンは決して自分を裏切らない、と。 源氏の総大将である九郎の師でもある彼は、望美が源氏と接触する際もきっと力になってくれるだろう。

「……わかった。でも無茶はするなよ」
「うん。ありがとう、将臣くん!」

幼馴染の協力を得られ、喜ぶ望美。
運命を変える戦いはまだ始まったばかり。
それでも絶対に叶えてみせる―――そう強く決意した。

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