君といつまでも

央撫7

一面に広がる白い花。久しぶりに訪れた思い出の地に、撫子は嬉しそうに央を見上げた。

「この世界に戻ってから、もう一度来たいとずっと思っていたの。ありがとう、央」

「どういたしまして。僕も、君とまたここに来たいと思っていたんだ。だから、君がここに来たいって言ってくれた時、嬉しかった」

荒れたこの世界で、唯一花の咲く場所。
何もかもが壊れてしまったこの世界で優先するべきことは人々の安定した暮らし。
食べられるものではない花は、本来ならば後回しにされるようなものなのに、政府――鷹斗は荒れたこの土地を整備して花を咲かせた。
その事実は撫子の心を温めてくれた。

撫子の意思ではなかったが、自分が原因で壊れてしまった世界。
その世界を放って元の世界に戻ることを躊躇っていた撫子を、央はこの場所に連れてきてその背中を押してくれた。
変わってしまった鷹斗への恐怖も拭ってくれた。
ここは央の優しさに溢れた、撫子の大切な場所だった。

「ここ以外にも、花が咲いている場所があるんだよ」

「本当?」

「うん。少しずつだけど、確実にこの世界は変わっていってる。いい未来に」

「ええ」

すべてが変わってしまった世界で、それでも人を信じ、明るい未来を信じて進んできた央。
トワイライト。
それは央と撫子が所属する組織の名前で、彼がつけたもの。
彼の願いどおりに、この世界は光を取り戻していくだろう。明るい未来に。

『僕と一緒にこの世界で生きて。ずっと――ずっと、一緒にいてください』

元の世界に戻った撫子がこの世界に戻ってきたとき、央と交わした約束。
ずっと一緒に――それは撫子の望む未来。
央のいない世界など考えられないのだから。

「央」
「なに? 撫子ちゃん」
「私と、ずっと一緒にいてね。私はあなたと一緒にこの世界で生きていきたい」

以前央から告げられた言葉を、今度は央へ。
重なる想いは撫子の心の奥底からの想いだから。
まっすぐに彼を見上げて伝えれば、浮かんでいた驚きが喜びへと変わっていく。

「――うん。僕も、君とずっと一緒にいたい。ずっと、一緒にいよう」

大好きな笑顔で告げられた変わらぬ想いに、撫子はあの時と同じように央の胸に飛び込んだ。
ここが私の帰る場所。
いつだって撫子が選ぶのは、この世界の、央の隣なのだから。
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