好き、って言って

契市2

「ねえ、市香ちゃん。好き、って言って」
そうねだる岡崎に、市香はその腕の中から「大好きです」と望む言葉を返す。

岡崎と恋人になってから、彼は市香にこうねだることが多くなった。
もちろん、岡崎からはその何倍も言われているし、市香だって彼のことが好きだから、求められれば応えるのは嫌じゃないし、同じように好きなのだと伝えたいとも思っていた。
けれども好きだと強いられ、これ以上ないぐらいに二人溶け合っても、それでも彼はいつだって不安そうに市香に触れていることを望むから、私はいなくなりませんと安心させるように何度と伝える。

大切な友人を失って、Xデー事件で市香を失いかけて、岡崎はきっとまだ怖くて仕方ないのだろう。
もう大丈夫だと、心配かけてごめんなさいと、何度告げても頷いてくれても、心の底に刻まれた絶望は彼を簡単には癒してくれず、だからこそ市香は伝え続けなければならなかった。
彼が好きだと、ずっと傍にいると――傍にいたいのだと。

「契さんが大好きです。ずっと、一晩中伝え続けます」

彼が不安ならばいくらだって伝えるから。
そう見上げればキスが降り落ちて。
貪るように唇を食まれ、舌を絡められて――市香が意識を失うまで、岡崎に抱かれ続けた。

2018ハロウィン企画
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