黒猫になった市香ちゃんのお話

ALL

①柳愛時の場合

「にゃあ」
「…………ん?」

聞こえた鳴き声に目を覚ますと、柳は首を動かし目を丸くする。

「猫?」
柳を見上げる黒猫は、声に反応するようにもう一度鳴くと、ウロウロと落ち着きなく歩く。

「岡崎が窓を開けっぱなしにしたか…?」

それとも榎本が出かける時に、ドアをきちんと閉め切っていなかったのかと、浮かんだ理由に身を起こすと、黒猫はぴょんと柳のベッドに飛び乗ってきた。

「こ、こら。俺はお前を飼えないぞ?」

動物が嫌いなわけではないが、ここに住んでいるのは柳だけではないし、探偵業を営むと決めた以上、依頼人だって出入りする。
そんな思いから窘めるように告げると、しゅんと落ち込むようにしっぽが垂れた様に良心が痛む。

(まさか、俺の言葉を理解できたとは思えないが……)

それでも、上目づかいに見上げる様はまるで幼子のようでむげにも出来ず、せめてご飯ぐらいは作ってやろうと立ち上がる。

「ちょっと待ってろ。何か作ってやる」

目覚めの一本と、煙草に火をつけ、クローゼットからいつもの灰色のシャツを取り出すと、寝間着代わりのスエットを脱ぐ。
にゃあにゃあ騒ぎ出した猫に、すぐに用意するから大人しくしてろと声をかけると、その拍子に灰が床に落ちた。
と、黒猫が柳に飛びつく。

「お、おい……はあ。……煙草に驚いたのか? すまんな。これだけはやめられないんだ……」

言い訳を口にしながら灰皿に灰を落とすと、宥めるように背を撫でる。

「毛触りがいいな……どこかで飼われてるんだろうな。いいのか? きっと、お前の主人が探してるぞ?」

滑らかな毛並みは野良猫とは思えず、凝った首輪からも飼い猫とうかがい知れた。

「にゃあ」
「これはダメだ。火傷する。少しだけ待ってくれ」

煙草に前足を伸ばす黒猫から遠ざけると、背を撫でなだめる。

「にゃあ」
「なんだ? ……もしかして、煙草をやめろって言いたいのか?」
「にゃあ」

同意とばかりに鳴く姿に、恋人の姿が思い出されて苦笑する。

「市香みたいだな」

彼女も吸い過ぎは身体に悪いです、と疲れたり考え事をするとつい煙草の本数が増える柳を、眉を下げて諫めていた。

「にゃあ?」
「わかったわかった」

潔く灰皿に煙草を押しつけ消すと、黒猫を片手で支えながら、羽織るだけになっていたシャツのボタンをかけようとした瞬間、黒猫が恋人へと姿を変える。

「…………は?」
「お、おはようございます。愛時さん……」
「……市香? ……どういうことだ?」

突然の出来事に固まったまま問う柳に、市香はとりあえずボタンを留めてくださいと、あらわになっている肌から目を背けながら、真っ赤な顔で懇願した。

②岡崎契の場合

「ふわ……ぁ……」

お気に入りのアイマスクを外すと、重たい瞼を開く。
仕事の合間の休憩時間、いつものように公園で眠っていたのだが、ある気配を感じて目覚めたのだ。

「……おはよう、猫さん」

岡崎の隣にちょこんと座った黒猫に話しかけると、にゃあと返事をする猫に微笑んで、今は何時だろうと携帯を開く。
以前にもこうして眠っている間に猫が寄ってきていたことがあったから、別段気に留めることはなく、岡崎の意識は恋人の市香へ飛んでいた。

(市香ちゃんからのLEAFは……ないか)

仕事でここ数日会えてなく、時間を見ては電話をかけて、せめて声だけでも聞こうと思っていた。LEAFにメッセージがないことを確認すると、猫の鳴き声に意識を向ける。

「にゃあ」

「どうしたの? 猫さん。お腹空いた? ……そういえば俺も、まだ何も食べてないや」

「にゃあ」

「ごめんね。ちょっと昨日は忙しくて。でも、夕飯が食べれなかっただけで、お昼はちゃんと食べてたから大丈夫だよ?」

黒猫の鳴き声に律儀に答える様は、まるでその言葉を理解しているようで、通りがかった人がくすくすと笑いながら歩いていく。
けれどもそんなことは気にしない岡崎は、黒猫の頭を優しく撫でると、気持ちよさそうに目を細める彼女にそっと口づけた。

「……!」

「あ、嫌だった? ごめんね。君が可愛かったから」

「…………」

「別に、誰にでもこんなことするわけじゃないよ? ……君だからだよ」

ふいっと顔を反らした黒猫に優しく微笑みかけると、確信をもってその名を呼ぶ。

「ね? 市香ちゃん」
「…………!」

ぴくんと、大きく身を震わせ振り返る黒猫。
その姿は猫以外の何物でもないというのに、岡崎の瞳には別の姿が映されていた。
――彼の愛する恋人が。

「――――やっぱり、君だった」

ぼふん、と煙のようなものに包まれたかと思うと、黒猫がいた場所に現れた市香に柔らかに微笑む。

「どうしてわかったんですか?」

「うん? 俺が君を見間違えるはずないよ」

「だ、だって、私、猫に……」

「あーそれ、どうして? 猫に変身できるなんてすごいね、市香ちゃん」

「私も朝起きたら猫だったんで、よくわからないんです……」

「そうなんだ?」

明らかな異常事態に、けれども岡崎の態度は普段とまるで変りなく、市香はこれもSPの資質なんだろうかと戸惑ってしまう。

「あ、市香ちゃんご飯食べた? まだなら一緒に食べよう?」
「まだ、です。でも、大丈夫なんですか?」

さっき猫の姿の時、仕事が忙しくて夕飯を食べ損ねたと言っていたことを思い出すと、大丈夫だよと微笑まれて手を握られる。

「今朝、吉成君と交代したから、昼まで休憩なんだ」

「そうなんですね。……だったら、私の家に来ませんか? 食事も作れますし、お昼までゆっくり休んでもらうこともできますから」

家に帰らずに公園で寝ていたぐらいだから、きっとよほど疲れているのだろう。
けれども、自宅に帰るように言っても岡崎は自分を気遣い、家まで送ろうとするだろうから、それならばと提案すれば、嬉しそうに顔がほころぶ。

「え? 市香ちゃんの家にお邪魔してもいいの?」

「はい。たぶん、香月もすぐに出かけると思いますし、ゆっくり休んでほしいですから」

「……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね。寝ている間も市香ちゃんがそばにいるなんて嬉しいな」

無邪気に喜ぶ姿に、彼のするりと人の懐に入り込む甘え上手な一面が伺い見れて、市香は苦笑すると手を繋がれたまま歩き出す。

「――――あ、そういえば」
「え?」

不意に立ち止まった岡崎を見上げれば、一瞬にして近寄った顔にちゅっと唇を食まれる。

「…………!」
「うん、やっぱり今の市香ちゃんにキスする方がずっといいね」

ふわりと笑んだ彼に、反則ですと真っ赤な顔で呟いた。

③榎本峰雄の場合

「にゃおん」

一人事務所を見渡していた榎本は、不意に聞こえた鳴き声に視線をそちらに向ける。
とことこと、ドアの隙間からやってきた黒猫は、ひょいとソファへ飛び乗ると、榎本に向かってもう一度鳴く。

「なんだ? 人懐っこいやつだな……どっから来たんだ?」

ひょいと抱き上げれば、嫌がる素振りも見せずにおとなしく抱かれた黒猫に、その頭を撫でてやると気持ちよさそうに喉を鳴らす姿に、目を細めて優しく語りかける。

「……今日でここを出るんだ」

感慨深げにもう一度辺りを見渡すと、そんな彼の様子を見るように黒猫がぴんと背筋を伸ばす。

「色々あったけどさ……過去にとらわれないで、前を向いて生きていきたい。俺のために全力でぶつかってきてくれたあいつを……守ってやりたいって思ったんだ」

藤井の死で、一度は逃げ出した。
けれども、前を向く勇気を市香が与えてくれたから、今度は自分が彼女を支える存在になりたい。そう思い、警察に復職することを決心した。
ぺろりと、頬を舐める黒猫に、榎本が照れくさそうに笑う。

「なんだ? お前、慰めてくれてるのか? はは、いい奴だな」

よどみのないまっすぐな瞳も、気遣う優しさもまるで彼女のようで、会いたいと自然と思う。

「――市香……」

呟きがこぼれ落ちた瞬間、ぼふんと音を立てて煙が噴き出し、げほげほと咳き込むと、煙の向こうから今思い描いていた姿が浮かび上がる。

「…………へ? 市香?」

「…………はい」

「え? ええっ? お前、いつの間に……っていうか、さっきそこにいたの、猫だよな?」

「は、はい……」

「猫が消えて、市香が……って、どういうことだよ?」

混乱する榎本に、市香は事の顛末を教えると、はあ~と大きく肩を落とす。

「……なんだよ、それ。漫画かゲームかっての……」

「信じられないのはわかります。でも……」

「あーお前を疑ってるわけじゃねえぞ? ただ単純に驚いたっていうか、こんなこと現実にあり得るのかとか、俺夢見てないよなとか思ってだな……」

市香の様子に慌てて取り繕う榎本に、子どもが縋るようにぎゅっと抱き着く。

「…………! お、お前……いきなり……っ」

「……ありがとうございます。峰雄さんの気持ち、すごく嬉しいです。でも私も峰雄さんを守りたい。人を思いやれるあなただから、傍で守りたいんです」

先程の榎本の言葉を思い出して告げれば、顔を真っ赤にした彼がうなだれて、悔し気に市香を見る。

「……お前って本当に男前だよな。少しは俺にも見せ場をよこせっての」

「そんなこと……! 峰雄さんはとってもカッコいいです!」

売り言葉に買い言葉でつい素直に告げれば、ますます彼の顔が真っ赤に染まる。
互いに褒め合い、照れる二人に、買い物から帰った柳は遭遇すると、気まずげに引き返しかけ、それを必死に止めるのだった。

④笹塚尊の場合

「にゃおん」
「………ん?」
猫の鳴き声にキーボードを打つ手を止めると、そこにはどこから入り込んだのか黒猫の姿。

「近所で飼ってるやつでもいるのか? ……ったく」

集中が途切れたのを感じて腕を伸ばすと、凝り固まった肩を回して、傍に置いておいたドーナツの袋を手に取る。
脳を使うと糖分が欲しくなる。
必然、PCに向かうのを仕事にしている笹塚に糖分は重要であり、常に買い置くようにしていた。

「……なんだよ。まさかドーナツが食いたいわけじゃないよな?」

ドーナツを手にした笹塚をじっと見つめる視線に動きを止めると、黒猫はひらりと机に飛び乗って。彼のくわえたドーナツに小さな口を寄せてくる。

「ドーナツを食いたがるなんてバカ猫みたいだな」

ご褒美だと差し出せば、頬を膨らませながらも受け取り、口にした瞬間へにょりと相好を崩す彼の恋人を思い出して微笑めば、猫が答えるようににゃおんと鳴く。

「……まさか、本当にバカ猫じゃないよな?」

ありえない。
常識で考えれば問うことさえ無意味なこと。
なのに口にしたのは、勘と言えるのかもしれない。
じっと見つめれば、たじろぐ様は市香そのもので、笹塚はドーナツを一気に食べると、今にも逃げそうな黒猫を抱き寄せた―――瞬間。

「…………っ」

ぼふんと、奇妙な音と共に人間に戻った市香は、自身の姿を見てほっと胸を撫で下ろすと、目の前で大きく目を見開いて止まっている恋人をおずおずと見上げる。

「……あの、おはようございます……」

「…………は?」

「勝手に部屋に入ってすみませんでした……」

「いや、そんなことどうでもいい。お前、さっきのはなんだ? 妖怪とかじゃないよな?」

「妖怪……って、そんなわけないじゃないですか!」

「だってありえないだろ。人間が猫になるって、どうすればそんなことが可能なんだよ。元々お前が猫又だとか言うんなら、話は別かもしれないけどな」

「私は人間です!」

どうしてこんなことを宣言しなくちゃいけないのだろうと、若干情けなくなりながら叫べば抱き寄せられて、一気に縮まった距離に鼓動が跳ねあがる。

「さ、笹塚さん? ちょ……っ、どこ触ってるんですか?」
「尻尾あるか確かめてた。やっぱりねえな」
「当たり前です!」
「当たり前が通用しなかったのがお前だろ」
「う……」

何が原因か、先程まで猫になっていた身としてはこれ以上反論も出来ず、市香は身をよじって腕の中から逃れようとする。
だがそれを笹塚が許すはずもなく、手慣れた様子で顎を捕まれ、ちゅっと唇を塞がれる。

「……逃がすわけねえだろ、バカ猫。どれぐらいおあずけ喰らってたと思ってんだ」
「それは、私のせいじゃ……っ」
「気配だけ残しやがって、生殺しかっての」

笹塚の渡した合鍵で家に来るのはいいのだが、仕事上なかなか休みが合わず、帰りも深夜を過ぎることが多く、彼が帰宅した頃には当然市香は弟の待つ家へ帰っていた。
だが部屋に漂う香りは彼女のもので、整えられた室内や、冷蔵庫にしまわれたおかず類が否応なく彼女の存在を感じさせて、触れることの出来ないもどかしさは日を追うごとに苛立ちを生んでいた。

「せっかくお前から転がり込んできたんだ。覚悟はできてるだろ?」
「覚悟ってなんのですか…!」
「言わせたいのか?」
「…………っ」

瞳に宿った欲は彼女も良く見知ったもの。
だから、笹塚の一言で彼が何を求めているのかを悟り、市香は頬を赤く染めるが、その腕の中から逃げることはない。

「よくできました」

にっと笑えば、泣きそうな顔で見上げる市香に煽られて、ベッドにその身を沈めた。

⑤白石景之の場合

【注意:if設定なので恋人状態ですが、某所に白石さんは入ったりしてません】

ぺろり、と頬を舐められて目を開けると、傍らにいる黒猫に手を伸ばす。

「……ん? お前、どこから入り込んだの?」

見慣れぬ黒猫は当然白石の飼い猫ではない。
けれども野良にしては毛並みがよく、首輪をしているところからも飼い猫だとわかる。

「ふわ…ぁ……。あ~着替えないで寝たんだっけ……」

あくびを一つこぼして己の様を見れば昨日の服のままで、そういえば仕事の資料を見ながらそのまま眠くなって寝たのだと思い出した。
寝苦しかったのだろう、ネクタイを緩めてシャツも肌蹴たらしく、市香辺りが見たら卒倒しそうな姿だなと笑みがこぼれる。

「あーでも、怒られちゃうかな……」

始めこそ目のやり場に困って、顔を赤らめ右往左往しそうだが、白石が着替えるのを億劫がって寝たのだとわかると、きちんと着替えて休まないと疲れが取れないだとか、説教されそうだと思い直す。
星野市香は白石の恋人。
自分で考えておきながら、恋人という響きが不思議で、自然と口元をほころばせるとにゃおんと猫の鳴き声に、そういえば忘れていたと向き直る。

「俺のところに来てもいいことなんて何もないよ? あ、遊ぶことはできるか」

野良猫たちと遊ぶのに必須な猫じゃらしなら持っているが、生憎餌になりそうなものはなく、それでも猫好きであることを自負している彼は、黒猫に手を伸ばすとひょいと抱き上げた。

「軽いなぁ。1番とは大違いだ。お前はもう少しお肉つけた方がいいかもね」

「にゃあ」

「不満? どうして女の子は太ることを嫌がるのかな。そういえば、市香ちゃんも前に気にしてたっけ」

一緒に食事をした時、デザートを頼むか悩んでいた市香に、食べたいなら食べればいいのにと促したら、夕飯食べ過ぎたからデザートまで食べたらさすがに食べ過ぎですとか、切なそうな顔でメニューを閉じていた。

「まあ、1番みたいになっても困るし、お前はいつでも餌をもらえるからいいのかな」

野良ならば自由である代償に安寧はなく、日々の糧さえ自らの手で得なくてはならないから、食べれる時に食べるのは当たり前だが、飼い猫ならば自由と引き換えに生き延びれる。
以前の白石なら、飼い猫より野良猫の方を好んだが、今は安寧がそばにあることを幸せに思えるから、この猫が満足しているならそれでいいと思えた。

「お前、甘えん坊だね。喉がごろごろ言ってるよ? ふふ、気持ちいいんだ?」

白石に抱かれた状態を全く嫌がらない黒猫を撫でながら語りかければ、喉を鳴らす様に可愛いなぁと眦が下がる。
猫は好きだ。今も、昔も。
昔は自由な様に憧れてだったが、自由を得た今でも変わらず彼らが好きだった。でも。

「市香ちゃん、遅いなぁ……」

今日は2人そろって休みだから、朝から一緒に過ごそうと約束していた。
もちろん、彼女はまだ弟と暮らしていたから、彼の朝ご飯を作ってからなのだが、本当は毎日だって一緒にいたいと思うのが白石の本音だった。

「ん? どうしたの? トイレ?」

白石に前足を伸ばして、落ち着きのなくなった黒猫に腕を緩めてやれば、ぼふんと形容しがたい音に続いて、先程と違った重量を感じる。

「…………市香ちゃん?」

「…………はい」

「君、今猫になってたよね? どうやったの? マジック? 君にそんな特技があったんだ?」

「そんな特技ないです。私にもわからないんです。朝起きたらあの姿だったので……」

驚きに目を丸くするも、彼女が猫になっていた事実に興味をひかれ、矢継ぎ早に質問する。

「ふーん……。もしかして、前に柳君が手紙をもらった『逆らえない相手』の仕業なのかな」

「なんですか? その『逆らえない相手』って」

「うーん、峰雄君曰く『それは言っちゃいけないやつ』らしいから秘密、かな」

口を塞ぐように指を添えてにこっと微笑むと、不満そうにしつつも口をつぐんだ市香。
気にはなるが、追及してはいけないと本能で悟ったのだろう。

「でも、来てたんなら言ってくれればいいのに。俺、待ってたんだよ?」

「言おうとはしたんです。でも、あの姿じゃ伝わらないです……」

「そう? まあ、いいか。今日はどうする? どこか行くの?」

「その前に、白石さんは着替えてください」

「……あ、そうだった。ふふ、目の毒だった? 顔真っ赤だよ?」

「当たり前です!」

「君って本当にわかりやすいよね。想像通りの反応だよ。……ああ、はいはい。着替えるって」

予想どおり、真っ赤な顔で急かされて、立ち上がると中途半端に肌蹴ていたシャツを脱ぐ。

「……! 何でここで脱ぐんですか?」
「え? だって、いつもここで着替えてるし」
「私、朝ご飯作ってますね……っ」

慌ててキッチンへと駆けて行く姿に、先程の黒猫の姿が重なって見えて、白石は楽し気に笑うと、さっさと着替えを済ませて彼女の元へと歩いて行った。

20170525
Index Menu ←Back Next→