「Trick or Treat?」
学園祭で普段よりも遅く帰ってきた郁を「おかえりなさい」と出迎えて。
「お風呂にする? ご飯を先に食べる?」と聞いた月子に帰ってきたのが先程の言葉。
「え?」
「今日が何の日か覚えていない?」
「10月31日……ハロウィン!」
「そう」
にっこり微笑む恋人に、月子は冷蔵庫に視線を送る。
「ちょっと待ってて」
「ストップ。今、持っていなければ悪戯に決定だね」
「そ、そんなのずるいよっ」
「ずるくないよ」
慌てる月子に微笑むと、手を引いて行くのはお風呂場。
「え? 郁?」
「だから、お菓子を持っていなかった君に悪戯するんだよ」
「……っ、一緒になんて無理だよ!」
「なんで? もう君の隅々まで知ってるのに……」
「郁っ!」
顔を真っ赤にして慌てる姿が可愛くて、ほんの出来心はあっさり誘惑に飲まれてしまった。
「今日はハロウィン。お菓子を持っていなかった小羊ちゃんは、狼さんの言うことを聞いてくれるんでしょ?」
ダメ押しで告げれば、断りきれない月子がせめてタオルをお願いしますと泣きついた。